獣医師による手作り食・自然療法ガイド

File 7:パーソンラッセルテリア・ラウルくん(13歳・慢性腎臓病)

今月の「自然派わんにゃんカルテ」はもうすぐ14歳のパーソン・ラッセル・テリア、ラウルくん(去勢雄)が登場!子犬の頃、ドライフードを食べると湿疹ができてしまうのをきっかけに手作り食を始めたそうです。以来、とても活発に毎日を過ごしていたそうですが、12歳のときに慢性腎臓病の診断を受け、現在は腎臓に優しい食事に切り替え。血液検査を毎月行い、食事管理にもきちんと反映させて、現在も治療薬なしで維持してらっしゃいます。

ラウルくんはどんなこですか?

  • アメリカ駐在時に出会った子で10年前に一緒に日本に帰ってきました。
  • 活発で我慢強く、頭の回転が早くて甘えん坊です。体質的にはでしょうか。動物病院でも採血中にウトウトしているような子です。
  • 他のわんちゃんに吠えられようが気にしない事が多いのですが、「どうしたの?」と寄って行って火に油を注ぐ事もあります。
  • 家の中では常に日向にいますが、私が動けば急いで後ろをついて周り、分離不安症気味です。
  • 家族の誰かが不調だと側についていて、何かあれば知らせてくれますが、ラウルも一緒にお腹を壊したりしてしまいます。

右がラウルくん。左は妹のキオラちゃん

手作り食にどんな効果を感じましたか?

我が家に来た時から皮膚湿疹とアカラス症があり、週に一回の病院での薬浴が欠かせませんでした。

自分に何ができるかと考えた時に、アレルギー検査をして手作りご飯にかえてみたらアレルゲンがなくなった事でまずお腹の湿疹がなくなり、アカラス症もあっという間に落ち着き、それ以降は発症していません。

現在のお食事(腎臓病食)
  • 1日3回、一日分の配分です。生食だとお腹を壊してしまうようになったので現在は加熱食です。
  • メイン:鰯、カツオ、スズキ、鮭、鶏むね、豚、ラム、鴨、牛肉など150 gと卵白20 g。
  • 野菜:人参、小松菜、ブロッコリー、ごぼう、レタスを中心に旬のものを100〜150 g。電気圧力鍋で茹でて茹で汁はこぼし、ハンドブレンダーで混ぜてペーストにします。
  • 炭水化物食品:さつまいも少しと白米や添加物不使用の玄米シリアル、玄米パスタなどを20 gほど。
  • 水分をあまり取らないので葛湯もしくは白湯を100 mlほど加えてスープご飯になるようにしています。
  • マメ肉、ハツが手に入れば時折あげています。
サプリメント

ラムかビーフのトライプ・緑イ貝のパウダー・フラックスシードオイル(亜麻仁油)・L-カルニチン・還元型CoQ10ビタミンEタウリン・ビーポーレン(朝)・昆布粉末(ヨウ素源)・卵殻パウダー(カルシウム源)・イパキチン(炭酸カルシウムとキトサンを含むリン結合剤

腎臓病対策にこんな工夫をしています

  • 若い頃はお肉が中心でしたが、慢性腎臓病と診断されてからは魚と肉を半々にしています。
  • タンパク質量を減らさずにリンを制限するため、卵白を加えています。
  • カリウムが高値になったことがあるため、食材を細かく切って茹でこぼしています。さつまいもはお米に比べるとカリウムが多いのですが、入っていないとご飯をしぶしぶ食べるので少量をいつもあげています。
  • 野菜を多めにしたら、クレアチニンBUNの数値が標準〜ちょっと高い位に落ち着きました。

慢性腎臓病と診断されてから、どの食材が良いだろう、どんなものが食べられるだろうと考えすぎてラウルがご飯を食べなくなる事がありました。

月一の血液検査結果で数値が上がって一喜一憂してしまうとすぐにラウルに伝わってしまうので、数値が悪くても落ち込まない、ご飯作りに根を詰めない、ラウルが好きなものは食事に出す事にしています。

食事以外で気をつけていることは?

  • 健康診断を年2回。血液検査、尿検査、糞便検査、心電図、胸部・腹部のレントゲン、腹部・心臓の超音波検査、甲状腺ホルモン検査を受けています。腎臓病と診断されてからは、月1度血液検査を行なっています。
  • 運動が好きで、若い頃はドッグビーチや1周5キロ程の島のドッグランに通っていたような子なので老犬になってからも運動量は多いです。
  • 暑い時期は川や自然の多い公園に行き、足りない分はバランスボールなどを使っています。暑くない季節は30分程度で登り降りできるハイキングコースに出向いて楽しみながら身体を動かしてもらっています。
  • そのほか、整体の先生の所で月に1度身体のメンテナンスをしてもらっています。

整体中。

老犬になりどんどん可愛く、魅力が増していくので凄くかまってしまいそうになるのですが、寝ている時はそっと頭や身体を撫でる程度に留めています。

獣医師より

かかりつけの病院で年2回、かなりしっかりとした内容の健康診断と月1回の腎臓のモニタリングを受けており、検査結果や体質の変化をきちんと食事管理に反映させていてとても優秀です。腎臓病の予後を左右する血清リン値も正常範囲内低め。水分もきちんと摂取させていますね。

若い頃から活発に運動してきたため、高齢期の今でもかなりの体力貯金が残っています。こうしたケイトさんの努力の積み重ねが病気の早期発見につながり、腎臓病ステージ2の今も治療薬や自覚症状なしで過ごせているのでしょう。悩みを相談できる整体の先生がいるのも心強いですね。

ビタミンB群の補給を忘れずに

エネルギー代謝、認知機能、神経機能の維持に重要なビタミンB群は、肉、魚、野菜などさまざまな食材に含まれていますが、水溶性で熱に弱いため、加熱食では不足しがちに。サプリメントの利用がおすすめです。

長期の腎臓病の管理に八味地黄丸を

漢方薬にご興味があるということで、詳しい問診票をお送りし、回答していただきました。診断結果は早期の腎虚。加齢に伴う腎泌尿器系や内分泌器官、神経系などの機能低下を意味しています。ラウルくんには特に腎気虚腎陽虚の傾向が見られ、乾いた咳、夜間の尿失禁、聴力の低下などの症状がありました。舌の色は年齢を感じさせないきれいなピンク色でしたが、やや腫れぼったく、体液や水分の流れが滞っていることがうかがえます。これも腎気虚と腎陽虚の症状です。一方で、腎陰虚からくる上熱下寒(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の亢進)の症状はそれほど顕著ではありませんでした。このような場合は、八味地黄丸が最適です。

八味地黄丸は、体をゆるやかに温め、腎機能を助けることで老化や老化に伴う症状を緩和します。主剤の地黄は、腎臓への血流を促すことがさまざまな研究から示されており、腎臓に血液や酸素、水分、栄養分を送ることで腎組織のさらなる損傷や線維化を防ぎ、慢性腎臓病の進行を抑えてくれます。

ラウルくんには夢をよく見る、暖かいところを好む、分離不安といった肝血虚の症状も若い頃から見られたようです。八味地黄丸にも肝血を補う生薬が含まれていますが、逍遥散も体質的に合いそう。レバーもおすすめの食材です。

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編集後記
若い頃から運動と手作りごはんで体づくりをしておくと、いざ高齢期にも闘病にも役立つというとても大切なお話を聞かせていただきました。まるでレストランで出てきそうなごはんも素敵。私たちスタッフも愛犬・愛猫の健康管理を改めて見直すきっかけになりました。ありがとうございます。
 
9月には妹のキオラちゃんにも登場していただく予定になっています。お楽しみに!
 
本シリーズでは、同じような悩みをもつ飼い主さんたちが不安や悩みを共有し、情報交換できるようコメント欄を設けています。どうぞご自由にお使いください。

16 COMMENTS

あすか

こんにちは。うちも老犬期に差しかかり腎臓の数値が高くなりはじめているところでしたのでとても参考になりました。お魚を増やしてお野菜多め、うち試してみようと思います。

ケイト

あすかさん、温かいコメントをいただきありがとうございました。
食事内容の一つとしてなにか参考になれば幸いです。
高齢期も楽しく美味しく過ごせるようにお互い緩やかに頑張りましょう!

うちはコーギーを飼ってます

はじめまして。兄妹の仲睦まじい様子がとっても可愛いですね!そして運動量!!おみそれしました〜〜〜。バランスボールは人用ので使えるでしょうか。うちも雨の日の運動に取り入れてみようかなと思っています。

ケイト

コーギの飼い主様、初めまして。コメントをいただきありがとうございます!
2匹は血がつながっていませんが、仲良く過ごしてくれて助かっています。
犬を飼うのが初めてでしたので、運動量の多い犬種ならばストレスを溜めないようにと心がけたら運動量が多くなってしまいました^^;
お陰で健康貯金ができた気がします。
バランスボールは人用のを使っています。半円の物、ピーナツ型のものと平べったいバランスディスクを使っています。
上半身をのせてみたり、ボールの上で座ったり、伏せたりさせています。
ピーナツ型は足の間で固定して使っていますよー。
コーギーちゃんだと取り入れるならバランスディスクはどうでしょう^^
雨の日の運動不足解消悩みますよね^^;

コーギー母

お返事ありがとうございます。平べったいのもあるんですね!それなら運動神経いまいちのうちのこも(私も)できそうです・・・?

ケイト

コーギー母さん
お返事が大変遅くなってすみません(;^_^A
是非是非乗ってみてくださいー!人間が楽しそうにしていると
わんこも興味を持ちやすいと思います♪

モモ母

こんにちは。参考になる記事をありがとうございました。我が家の愛犬もステージ2で、同じように卵白を混ぜたり、リン吸着剤を使ったりしています。漢方薬もドラッグストアで見つけたので取り入れてみました。野菜はペーストにしない方がBUNが下がりやすかったので千切りにしています。高齢なのでそろそろ加熱食かと思っているのですが、ずっと生食でがんばってきたので加熱して成分を壊してしまったりすると逆に命を縮めるのではないかと怖くてなかなか思い切れません(><)ラウルくんは生食から加熱食に切り替えたとき何か変わったことはありませんでしたか?

ケイト

モモ母さん、初めましてこんにちは!コメントいただきありがとうございました!
ラウルと同じステージですね^^:
毎日これ以上ステージが上がらなければいいなと自分に出来る事を考える日々です。
うちの子たちは生食にしている時期もありましたが、どうしてもお腹を壊し体調を崩してしまって以来加熱食にしています。
生食から加熱食にした時には特に変わった事はありませんでしたが、モモ母さんの仰る通り成分が壊れてしまったり水分量が足りなかったりします。
足りない栄養素はサプリメントや粉末昆布、カルシウムパウダーなどで補うといいかなと思います。
加熱食は身体を温めてくれたりと良いこともあります。
私は比較的成分が壊れにくい圧力鍋で作っていますが、心配なら水炒めから試してみるのはどうでしょうか?
https://www.whollyvet.com/2019/01/raw-or-cooked/
お互い毎日愛犬の事で心配ですが、わんちゃんも飼い主さんも心穏やかに過ごせますように。
長くなってすみません。

モモ母

ご丁寧なお返事をありがとうございます。そうですか、特に変わったことはなかったんですね。私の犬友は生食派が多くて、加熱したら非難ゴーゴーで(^_^;)Wholly Vetさんを見つけるまでそんなに悪いことなのかと昔から疑問だったんです。ケイトさんのわんちゃんも先日のこまちゃんも元気に過ごされているようですし、思い切って試してみようかと思ってます。またご報告しますね!

ケイト

モモ母さんへ
お返事が大変遅くなってしまいました(;^ω^)
生食も加熱食もその子の体質次第ですし、どちらも食事内容は飼い主さんがわんこの為に一生懸命考えますよね♪
年を取ってきたから消化のいい加熱食を検討したモモ母さんの考えでいいと
私は思います。
またお話聞けたら嬉しいです!

くぅ

こんにちは。
ラウルくんがお使いのサプリメント内容が現在私が使用しているものと今後使用予定のものが含まれていたので質問させて下さい。
1日3食のあげ方として、食事内容は同じで後から足してあげるサプリメントだけが異なる感じでしょうか?
我が家は1日4食なのですが、どこで何のサプリメントを入れてあげるのが良いのか迷います。どのような組み合わせでいつ何をあげるのか、良ければ教えていただきたいです。
また3食分は一気に作っていらっしゃいますか?なるべく台所に立つ時間を少なくした方が良いだろうと最近思ったので何か工夫されていることがあれば教えて下さい。
そしてうちの子も水分をあまり取らないのですが、「葛湯もしくは白湯を100 mlほど加えて」というのは便等の状態を見て量を決められたのでしょうか?
よろしくお願い致します。

ケイト

くぅさんこんにちは!初めまして。コメントをくださりありがとうございました。
サプリメントの組み合わせですが、
・毎食食事に混ぜるもの:タウリン、昆布粉末、卵殻パウダー、イパキチン
・毎食後の口濯ぎ用に水分50mlほどと一緒に与えているもの:緑イ貝のパウダー
・朝と三食目もしくは4食目に混ぜるもの:ラムかビーフのトライプ、フラックスシードオイル、L-カルニチン、還元型CoQ10、ビタミンE、今回診断していただいた漢方など。
記事内には書いていませんが、ワクチン接種の前後にはミルクシスルのハーブチンキを朝と一日の最後の食事に与えています。
本当は毎食ごとにあげたほうがいいのかもしれませんが、朝と1日の終わりに与えているのは量を計算しやすいからです^^;
食事は3食一気に作っています。忙しい週があったり、ペットホテルに預けなければいけないときなどは必要数+αを作って冷凍しています。
私もなるべく台所に立つ時間を減らして、犬たちと過ごしたいなと考えています。
自発的に水分摂ってくれないとちょっと心配になりますよね^^;
仰る通り、便の状態や肩回りの皮膚をつまんで離してみて水分量を決めています。
冷蔵していた加熱食にお白湯をかけるのが基本で、葛湯にする場合はお腹を壊している場合にあげています。
食後にも口濯ぎの為に50mlほど水分を摂っているので、食事には50ml~100ml前後ほどでしょうか。
なにか参考になれば幸いです。

くぅ

こんにちは!ご丁寧な返信ありがとうございます。
昆布粉末も毎食食事に混ぜてらっしゃるのですね。とても微量なので難しくはないですか?私はだいたい3食目にしか入れていないので…
口濯ぎも良いですね。歯磨きでは取れなかったカスなどが取れそうです。参考にさせていただきます。
また、L-カルニチンやタウリンなどはいつ頃から食事に加えるようになりましたか?
Instagramにもお邪魔させていただきました。私も完全ではないですがレクチンフリー食で作っています。ビタミンEサプリメントはレクチンを含むものが多いかと思うのですがどのようなものを使っていらっしゃいますか?良ければ教えていただきたいです。よろしくお願い致します。

ケイト

くぅさんへ
お返事が遅くなってすみませんでした(;^ω^)
3~4回にわける時は一日分を計っておいて、そこから小分けにあげていますよー。
わんちゃんが小さいと計量も大変かもしれませんね(;^ω^)
小分けにするかしないかは体調やうんちの様子を見て私は決めています。
インスタグラムのほうへも来てくださってありがとうございます!
最近忙しさにかまけて更新してなくてすみません(;^_^A
L-カルニチン、タウリン、CQ10はラウルが腎不全、下の子が健康診断の時に心臓病だと同時にわかってからあげ始めましたよー。
レクチンフリーの食事は目指していますが、ビタミンEのサプリはひまわりオイル由来の物を使っています。
https://www.whollyvet.com/natural-pawpedia/vitamine/
ビタミンEのこちらの記事から引用させていただくと
>ひまわり油や小麦胚芽油由来のサプリメントでも、ビタミンEだけを抽出・濃縮しているのでレクチンはほとんど含まれていません。
との事なので様子を見てあげていましたが、お腹を緩くすることも、体調が悪くなることも今のところはありませんでした。
大豆由来の物は下の子が大豆アレルギーなので念のため避けています。
なにか参考になれば幸いです。

AKI

犬にもバランスボール!考えたこともなかったです。ネット検索したらいろいろ出てきました。筋力アップにいいんですね。さっそく試してみようと思います。低そうなのから・・・☺️素敵なアイデアをありがとうございました。

ケイト

AKIさん初めまして!コメントをくださりありがとうございました!
もし取り入れるのならバランスディスクというものが一番低いです。
室内遊びと一緒に良かったら取り入れてみてください^^

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