獣医師による手作り食・自然療法ガイド

四妙散

四妙散(しみょうさん)は、ペットフードの普及に伴う現代病に悩まされる犬猫によく使われる漢方処方です。たった4種類の成分で、非常に幅広い種類の病気に対応。特に急性期から亜急性期の炎症を抑える作用がありますが、そのもっとも重要な作用はインスリン抵抗性を改善する力にあるといえるでしょう。

四妙散の働き

四妙散は高い抗炎症作用を持ちます。炎症時に産生される悪玉サイトカインや一酸化窒素を抑制することで、炎症の悪循環を断ち切り、組織や臓器の損傷を軽減します。

特に粘膜および上皮の血流を抑える必要がある急性期から亜急性期の炎症に効果があります。急性〜亜急性期の症状が収まってきたら、今度は逆に血流を促す慢性期用の漢方薬へと切り替え、残っている炎症を解消するのが賢い使い方。

漢方医学的にいうと、実熱の中でも特に「若干の脾虚と瘀血を伴う湿熱」にぴったりです。

ステロイドを使いたくなるような場面に

抗炎症作用が高い四妙散は、アレルギー性皮膚炎、腸炎、外耳炎など、原因の特定や症状のコントロールが難しく、一般の病院なら「とりあえずステロイドを・・・」といいたくなるような炎症性・アレルギー性・自己免疫性の疾患の管理に向いています。すでにステロイドを使用している場合でも、投与量を最小限に抑えることができるため、副作用が生じにくくなります。

四妙散とステロイドは安全に併用することができ、ステロイドの量を減らすことができます。

インスリン抵抗性によるメタボ系の疾患に

四妙散が効果を示す犬と猫の病気のもう一つの特徴は食事に起因すること。穀類や豆類、炭水化物量、酸化脂質の多い食事、加工精製により消化性を過度に高くした食事など、いわゆる「現代的な食生活」です。これらの食事を何年も続けていると、肥満やインスリン抵抗性を起こし、炎症が全身に広がり、さまざまな病気を引き起こします。

メタボにおける炎症サイクル

代表的な病気は、2型糖尿病副腎皮質機能亢進症膵炎、関節炎、繰り返す膀胱炎(特発性下部尿路疾患)や外耳炎、肛門嚢炎などです。四妙散は食事に起因するこれらの数々の疾患を一網打尽に。逆にいうと、四妙散に良好な反応を示す犬猫は、犬猫本来の食性にあった低糖質・低脂肪食の手作り生食にもとてもよい反応を示します。食事の変更を一緒に行うことで、より高い効果を感じることができるでしょう。

ペットのメタボについて考えよう手作り食クイックスタートガイド

こんな子に向いています
  • 暑さに弱い
  • 春〜夏に症状が悪化する
  • 太りやすく、肥満または肥満歴があり、基本的には活発な実証タイプだけれども、ときどき説明のできない胃腸症状を示す(ときどき吐く軟便になるなど)
  • 外耳炎、膀胱炎、膣炎、肛門嚢炎、腸炎、皮膚炎など、複数の炎症性疾患がある、または、繰り返す傾向がある
  • 粘液状の分泌物が気になる
  • 口臭、体臭、便臭、おならなど「ニオイ」が気になる
  • 飲水量と食欲のどちらかが増えている
  • 足腰が弱ってきた(特に下半身)
  • 土タイプの犬(特にレトリバー系)
  • 舌が赤い(特に裏側)、湿って腫れぼったい

こんな子には使えません
  • 虚証タイプ(体力気力が衰え、舌色が悪く弱々しい子・超高齢期)
  • 梅雨〜夏の方が調子がよい

虚証タイプの子のインスリン抵抗性には胃苓湯がおすすめです。

成分

  • 抗炎症:マクロファージによるサイトカイン生成を抑制
  • 脾(胃腸)を温める
  • 湿邪を取り除く
  • インスリン感受性を高める
  • 腸けいれんを緩和
  • ベルベリンなど複数の成分が抗酸化・抗菌作用を発揮
  • 炎症性サイトカインを抑制
  • 炎症性サイトカインによって誘導される一酸化窒素合成酵素の発現を抑え、組織を傷害する一酸化窒素の産生を低下
  • 湿熱を取り去る
  • 胆汁の合成と流れを促進・胆泥を解消
  • ALP・ALT・AST・GGTを下げる
  • 骨髄における血小板の生成を助ける
  • 免疫力を高める
  • TCA回路を促進して体脂肪の消費を助ける
  • 抗腫瘍
  • 血液の循環を促す
  • 長期間の湿熱の持続による脱水・瘀血を緩和し、下半身・後肢の動きをスムーズにする
  • 湿邪・風邪を取り除き、筋骨格系の痛みを緩和
  • 清熱
  • 脾(胃腸)をサポート
  • 一酸化窒素の生成を抑制
  • マクロファージによる活性酸素種の生成を抑制
  • インスリン感受性を高める
  • 脂肪を減らす
  • レプチン濃度・インスリン濃度を低下させる
  • 抗腫瘍

用量・用法

  • 体重 1 kg あたり有効成分量 60〜75 mg から開始し、1日2回に分けて食事とともに与える。副作用がない場合は、用量を2〜3倍まで増やしてもよい。最大で体重 1 kg あたり200 mgまで。
  • 2〜3週間おきに症状を確認し、その都度、処方を調節する。
  • ステロイドや抗生物質と併用可能。
  • 四妙散で症状が悪化した場合は、慢性炎症を解消する漢方薬や補血系の漢方薬が向いている証拠です。
漢方薬やハーブを使用する前の注意事項用量・用法・上手な飲ませかた

近くの病院や薬局で入手できない場合は

日本では四妙散を取り扱っている病院や薬局があまりありません。海外サイトから購入する場合は「Si Miao San」「Four Marvels」で検索してください。 Kan Herbsの「Four Marvels」がおすすめです。または、漢方薬局で下の割合で調合してもらうといいでしょう。

蒼朮6〜9 g
黄檗6〜9 g
牛膝6〜12 g
薏苡仁6〜12 g

適応症

炎症性疾患

一般の病院でステロイドを使用するような急性〜亜急性期の炎症性疾患やアレルギー性疾患、自己免疫疾患におすすめです。再発性の場合は、特に春から初夏にかけて悪化する傾向があればぴったりでしょう。

  • 関節炎(特に後肢)
  • 腰仙部の炎症・疼痛
  • 椎間板ヘルニア
  • 皮膚炎・膿皮症・脂漏症
  • 外耳炎
  • 肢端皮膚炎

インスリン抵抗性・メタボリックシンドローム

その他

  • てんかん
  • リンパ腫(他の漢方薬と併用)
  • 変性性脊髄症