2015 / 11 / 01

骨付き肉でカルシウムを補給する

犬と猫は人間よりもずっと多くのカルシウムを必要としていることはご存知ですか?

カルシウムの推奨摂取量を体重1 kgあたりに換算すると、成人男女では9〜13 mg、成犬(避妊去勢済み)では50〜80 mg、成猫(避妊去勢済み)では30〜50 mg。つまり犬猫は3〜10倍多くカルシウムを必要としているため、人の食事と同じ感覚で犬猫の食事を作っていると、カルシウムがまったく足りなくなってしまうのです。

成人
成犬
成猫

体重 1 kgあたりのカルシウム推奨摂取量の比較

実際に当サイトの獣医師が手作り食を食べている犬猫100頭の栄養分析を行ったところ、半数近くの48頭でカルシウムの摂取量やカルシウムとリンのバランスに問題があることがわかりました。そのうち20頭ではなんとなく元気がないなどの非特異的な症状や腎臓病、尿路系疾患、心臓病、内分泌系疾患が認められ、血液検査でカルシウム濃度に異常が認められたのは8頭でした。

手作り食でカルシウムのバランスをとるのはそれほど難しいことではありません。いくつかの方法がありますが、今回の記事ではサプリメントを使わずに骨付き肉だけでカルシウムを補給する方法についてみてみましょう。

骨付き肉の利点

サプリメントではなく生の骨付き肉でカルシウムを給与することには様々な利点があります。

  • 生物学的に正しい選択肢

犬と猫の長い進化の過程では骨と卵殻のみがカルシウム源でした。

  • 与えすぎを目で確認できる

過剰分は吸収されずに便と一緒に排泄されます。ウンチが白〜灰色でカチカチになったら与えすぎのサイン。

  • カルシウムとリンのバランスを考える必要がない

犬猫では食事中のカルシウムとリンのバランスも大切です。どちらかが多すぎたり少なすぎたりすると、カルシウムの吸収がうまくできなかったり、体内のカルシウム量を調節するために上皮小体や腎臓に負担をかけることになります。骨はカルシウムとリンのバランスに優れているため、面倒な計算をする必要がありません。

  • 噛むことで歯や歯茎を丈夫にし、ストレスを発散

よく眠り、精神的に安定した子になります。

  • 歯磨き効果

肉をひきちぎる、骨を噛むという動作によって歯垢を除去することができます。ただし、歯の間隔が狭い小型犬や肉以外の食材を与えている場合は効果は完全ではありません。

  • 肛門嚢を絞る必要がなくなる

ウンチが固めになるため、排便時に肛門嚢が適度に押されて液がたまらなくなります。

  • 他のサプリメントを与える手間が省ける
  • 肉や骨髄中の脂肪に脂溶性ビタミンや脂肪酸が含まれる
  • ヨウ素以外のミネラル(鉄、マグネシウム、マンガン、亜鉛、銅、フッ素など)が補給できる
  • 肉と骨を合わせると必要なアミノ酸すべてを含む(タウリンを除く)
  • 骨髄には骨や血液、免疫細胞の形成に必要なさまざまな因子が存在

どのくらい与えればいいの?

必要な骨の量を計算する方法には2通りあります。生活スタイルに合わせて選びましょう。

1. 主食の肉に対する骨の割合で計算する

お肉屋さんやペットショップで骨だけを購入したり、骨付き肉を買って骨と肉を分離する場合には、こちらの方法で計算します。

[犬] 肉+魚+内臓肉の重さに対し10〜25%の重さ

肉・魚
70〜80%
レバー
5%
他の内臓肉・卵
5〜15%

10〜25%

野菜+少量の炭水化物

[猫] 肉+魚+内臓肉の重さに対し5〜10%の重さ

肉・魚
80〜90%
レバー
5%
他の内臓肉・卵
5〜15%

5〜10%

少量の野菜 + 炭水化物

体重で計算してみる(1日分)
肉の量で計算してみる

2. 肉に対する骨つき肉の割合で計算する

肉と骨を分けず骨付き肉のまま与える場合はこちらの方法で計算します。骨付き肉に含まれる骨の量はさまざまですから、骨の含量で分類し、それぞれどれくらいの分量で主食の肉と混ぜればよいかみてみましょう。

骨の量が50%以上の骨付き肉
  • 牛リブ(脂身なし)
  • 牛テール
  • 鶏あし
  • 鴨・七面鳥ネック
肉+魚+内臓肉 骨付き肉
3/4(75%) 1/4(25%) 最大1/2まで
90% 10% 最大20%まで
骨の量が30〜40%の骨付き肉
  • 鶏手羽先
  • 鶏ネック
  • 鶏ドラムスティック
  • 七面鳥手羽
  • 七面鳥ドラムスティック
  • 鴨手羽
  • ラムスネ肉(脂身なし)
  • 豚リブ(脂身なし)
肉+魚+内臓肉 骨付き肉
2/3(66%) 1/3(33%) 最大70%まで
85% 15% 最大30%まで
骨の量が20〜30%の骨付き肉
  • 鶏手羽元
  • 鶏レッグ
  • 丸鶏
  • ラムチョップ(リブ)
  • ラム肩肉
  • ラムスネ肉
  • 牛Tボーンステーキ
  • 豚リブ
  • 鴨レッグ
肉+魚+内臓肉 骨付き肉
1/2(50%) 1/2(50%) 最大100%まで
4/5(80%) 1/5(20%) 最大50%まで
骨の量が20%未満の骨付き肉
  • 鶏骨付きもも
  • 七面鳥骨付きもも
  • 豚骨付きロース
  • ラムウデ肉
  • 七面鳥骨付きもも
  • 七面鳥レッグ
肉+魚+内臓肉 骨付き肉
1/3 2/3 最大100%まで
2/3 1/3 最大2/3まで
他の骨付き肉の骨の割合を調べる

どの種類の骨を選ぶ?

体の大きさや食べ方にあった骨を与えることが重要です。例えば猫や小型犬に牛リブやラムすね肉を与えても表面をかじるだけで骨を砕くことができないため、カルシウム源にはなりません。大型犬の場合は手羽などの小さなものを与えると、そのまま丸飲みして喉につかえる危険性があります。

丸飲みせずに時間をかけてかじり、完食できるものが理想的です。

骨を与える際によく観察して、自分の犬猫にあったものを選ぶようにしましょう。

猫・小型犬

  • 鶏ネック・手羽・足
  • 小さめの牛テール
  • ラムリブ
  • うずらなど

中型犬

  • 鶏・鴨
  • リブ
  • ラム肩
  • 牛テールなど

大型犬〜

  • 牛リブ
  • 鶏レッグ
  • ラムすね(?)
  • 鴨・七面鳥など

注意点

  • 人の食事の食べ残しなど、加熱調理した骨は与えないこと。加熱すると割れた時に尖ることが多く、消化管を突き破る危険性があります。
  • 生の骨でもかじり方によっては尖る場合があります。初めての骨を与える際には必ず観察しましょう。

縦に割れたラムリブ(ラムチョップ)の生骨。本能で食べてはいけないとわかる犬猫もいるが、そのまま丸飲みしてしまう子もいる。

  • いったん冷凍保存して寄生虫を死滅させるなど、生ものを与える際の一般的な注意点を守ること。
  • 大きなものを与える時は、胃腸を冷やしすぎないようにお湯で軽く温めること。
  • 骨では補えない栄養素:
  • 血液検査(カルシウム、リンなど)と尿検査を年1〜2回行い、異常があった場合は精密検査を受けましょう。動物の体内では血液中のカルシウムとリンの量を一定に保つために骨への貯蔵、骨からの引き出し、腎臓からの排泄などの方法によって常にカルシウムとリンの量が調節されているため、血液検査や尿検査で異常が出るまでには時間がかかります。日頃からカルシウムの適正な給与量をチェックする習慣をつけましょう。
  • 老犬、顎・歯が細く弱い品種、猫には柔らかめの骨を与えましょう。鶏ネック、手羽、関節、若い動物の骨(若鶏、雛鷄、ラムなど)が比較的柔らかめです。鶏肉の骨であれば、バイタミックスなどプロ仕様のミキサーで肉や骨を丸ごと細かくして与えることができます。
  • 歯みがき代わりになるとは限りません。特に小型犬や肉以外の食事を与えている場合は注意が必要です。重度の歯の疾患がある場合は、骨を与える前にまずは治療をお勧めします。
  • スモークボーンやボーンミールでもカルシウムとリンを補うことができますが、加熱しているためビタミンなどの栄養素は失われます。
  • 与えすぎるとウンチがカチカチになって便秘します。骨の量を加減して、ちょうどいい給与量を見つけましょう。
  • 原産国によってはフッ化物汚染されている可能性があります。水道水にフッ素を添加している国では、その水道水を飲んだ家畜の骨にフッ化物が高濃度に蓄積していることが報告されています。
参考文献
  1. 厚生労働省「第6次改定日本人の食事摂取基準(2015年版)」
  2. National Research Council Ad Hoc Committee on Dog and Cat Nutrition: Nutrient Requirements of Dogs and Cats, Rev. edn. Washington, D.C: National Academies Press. 2006
  3. 文部科学省食品成分データベース
  4. 米国農務省食品成分データベース