獣医師による手作り食・自然療法ガイド

内臓肉給与ガイド

レバー、マメ、ハツ・・・内臓肉は天然のマルチビタミン・ミネラル剤です。手作り食を実践している方にとっては万能サプリメントとして、ペットフード派の方には不足している生理活性物質を補給してくれる貴重な薬膳食材です。上手に活用して毎日の健康管理に役立てましょう。

与え方の基本

種類によって薬膳効果や補える栄養素が異なるので、できるだけたくさんの種類を少しずつ取り入れることがおすすめです。手作り食ではレバー・マメ・ハツの3種類を取り入れると、必要なサプリメントが最小限になり、薬膳的にも気・血・水のすべてを補って陰陽のバランスと巡りを改善することができます。

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1日の給与量の目安は体重の0.1%ずつ!

1日の給与量の目安は体重の0.1%ずつ。つまり体重 1 kg につき 1 g ずつです。この量を守っていれば、栄養素が過剰になりすぎたり、不足しすぎたりする心配がありません。主食の肉・魚の量の5%ずつを目安にすることもできます。

病気対策には・・・

”肝臓病には肝臓を、腎臓病には腎臓を、心臓病には心臓を、膵臓病には膵臓を”

病気治療の一環として取り入れる場合は、気になる臓器の量をやや多めにします。例えば、腎臓病の場合は腎臓肉マメ)を、肝臓病の場合はレバーを2〜3倍の量に増やします腎臓肉には腎臓の機能に、レバーには肝臓の機能に必要な酵素やホルモン、サイトカインなどの生理活性物質が豊富に含まれているためですね。心臓肉(ハツ)、膵臓(ドモ・シビレ)、肺(フワ)なども同じように使うことができます。

給与方法

生か軽く加熱する程度がおすすめです。

生で与える場合
  • ビタミン・ミネラル・生理活性物質すべてを壊すことなく補給できる。
  • 鮮度のよいものを購入し、最低3日間は必ず冷凍保存する(寄生虫などを死滅させるため)。
  • あるいは、あらかじめ冷凍保存されたものを購入する。
  • 与える前日に冷蔵庫で解凍し、温かい食事に混ぜて与える。
調理する場合
  • 脂溶性ビタミン(A)やミネラルは熱に比較的強いが、水溶性ビタミン(B群)やコリンタウリン、生理活性物質は多くが失われる。
  • 鮮度のよいものを購入し、少量の水で軽く茹でるか蒸す。
  • 調理に使った水も一緒に与える。
  • 加熱すればするほど栄養素が壊れていくので注意する。
生にする?加熱調理する?生食における食中毒・感染症予防ガイド

内臓肉の薬膳効果と栄養素の比較

比較的入手しやすい内臓肉の薬膳効果と重要な栄養素をまとめました。栄養価は由来動物(豚、牛、鶏、羊など)、産地、季節によって異なりますが、大まかな特徴は変わりません。

生100 g あたりの栄養価
  肝臓
(レバー)
腎臓
マメ
心臓
(ハツ)
膵臓
(ドモ)

(フワ)
(mg) 4〜13 3.7〜4.5 3.3〜5.1 2.1〜 2.3 5.2〜18.9
亜鉛(mg) 3.3〜6.9 1.5〜2.4 1.7〜2.3 1.9〜2.6 1.2〜2.0
セレン(µg) 50〜67 210〜240 0 20.7〜40.8 17.2〜44.3
ビタミンA(µg) 1100〜14000 4〜75 9〜700 0 0〜27
ビタミンB1(mg) 0.2〜0.4 0.3〜0.5 0.2〜0.4 0〜0.1 0.〜0.1
ビタミンB2(mg) 1.8〜3.6 0.9〜1.8 0.9〜1.1 0.2〜0.5 0.2〜0.4
ビタミンB3(mg) 4.5〜14.0 5.5〜6.0 5.8〜6.0 3.5〜4.5 3.3〜4.1
ビタミンB6(mg) 0.6〜0.9 0.4 0.2〜0.3 0〜0.5 0〜0.1
ビタミンB12(µg) 25.2〜52.8 15.3〜22.1 1.7〜12.1 6.0〜16.4 2.8〜3.9
葉酸(µg) 810〜1300 130〜250 5〜43 3〜13 0〜12
ビオチン(µg) 76.1〜232.4 89.6〜99.5 0 ND ND
リノール酸(mg) 200〜270 230〜460 290〜1900 ND ND
DHA + EPA(mg) 19〜218 2〜77 0〜70 0 0〜20
タウリン(mg) 20〜110 23〜77 65〜118 ND 78〜96
コリン 194〜333 223〜333 127〜231 ND ND
薬膳効果 造血・解毒・補気・補肝 造血・潤す・温める・補腎 補血・神経を落ち着かせる 消化酵素の補給・健脾 鎮咳・肺を強化

ND=データなし。ビタミンB群タウリンは調理によって失われます。

レバー(肝臓肉)

ビタミンA葉酸亜鉛が豊富。手作り食でレバーを与えない場合はビタミンAビタミンB群の不足に気をつける必要があります。レバーは造血と解毒を助け、全身循環と代謝をスムーズにすることで精神的にも身体的にもバランスの取れた状態を維持するのに役立ちます。

マメ(腎臓肉)

抗酸化ミネラルのセレンが豊富な貴重な食材。入手できない場合はセレンが不足しがちになります。慢性腎臓病ではエリスロポエチンの作用で貧血を予防・改善する効果があります。

薬膳効果は由来動物によって若干異なり、牛と羊のマメは体と腎臓を温めて機能を改善する効果が高く、豚のマメは体と腎臓を潤して炎症を抑える効果が高くなっています。

ハツ(心臓肉)

心臓の機能を高め、神経を落ち着かせる作用があります。猫ちゃんに欠かせないタウリンが豊富です。

ドモ(膵臓肉)

膵臓では、炭水化物・タンパク質・脂質を分解する消化酵素や糖分の代謝を調節するインスリンやグルカゴンなどの複数のホルモンが作られています。胃腸の弱りからくるさまざまな不調を予防・改善する効果があり、膵外分泌不全、1型糖尿病などの疾患の治療補助にも使われています。

フワ(肺臓肉)

分が豊富。肺を潤して咳を鎮め、呼吸機能を高めてくれる効果があります。

その他の内臓肉

  • 脾臓(チレ):血液を貯蔵する器官なのでの量はレバーの3〜10倍。特に成牛で高くなっています。ビタミンAは含まないため、ビタミンAを過剰給与せずに分だけ補給することが可能。免疫細胞の成熟の場でもあるため、免疫力の強化にも。
  • 舌(タン ):内臓肉のなかではタウリンの量がダントツで、ハツよりも多くなっています。脂質とリノール酸も豊富。
  • 脳みそ・脊髄:神経細胞が集まった脳や脊髄は、DHAEPAコリンが比較的豊富。狂牛病(牛海綿状脳症)の発生以降、入手が困難に。購入時は、感染リスクの低い若い牛や羊、オーストラリア、日本、アメリカなどの狂牛病清浄国の動物由来か確認しましょう。
  • 胃袋(トライプ)・小腸(ヒモ・ホルモン):消化酵素と善玉菌動物性繊維を補給。人の食用として洗浄されたものには消化酵素や善玉菌は含まれませんが、動物性繊維源にはなります。
  • 砂肝:低カロリー高たんぱく質のおやつに最適。
  • 副腎:副腎の機能を強化し、ステロイドホルモン、アドレナリンなどの副腎ホルモンを補給。

精巣は雄性ホルモン(テストステロン)を、子宮や卵巣は雌性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロンなど)を補給することができます。肥満防止等の効果が考えられますが、長年腫瘍を扱ってきた獣医師としては腫瘍の原因にもなるこれらのホルモンを過剰に与えることには反対。ごく少量に制限するか、去勢や避妊後に性ホルモンの不足による障害(例えば、避妊雌の尿失禁など)が発生した場合に使用するといいでしょう。避妊去勢を行なっていない子には与えてはいけません。

注意点

  • 肝臓と腎臓は解毒排泄器官です。家畜に投与された薬物や家畜飼料に含まれる農薬、化学薬品の多くは肝臓と腎臓に運ばれてから体外へ排泄されます。つまり、レバーとマメにはこれらの化学物質が蓄積している可能性があるため、大量に与えないよう注意する必要があります。「体重の0.1%」という給与量を守っていれば、これらの化学物質の影響を受けることなく薬膳効果を出すことができます。家畜への抗生物質、ホルモン剤等の薬剤の使用が制限されており、オーガニック認定製品であれば、さらに安心ですね。
  • レバーはビタミンAが豊富です。ビタミンAは脂溶性ビタミンなので、体外には排泄されず、体の中に貯蔵されます。ビタミンA過剰症を防ぐため「体重の0.1%」の適量を守るようにしましょう。この2〜3倍の量までなら過剰症が起こることはありません。
  • 主食の肉魚と内臓肉だけでは補いきれない栄養素があります。他の食材やサプリメントも利用しましょう。

カルシウム(骨・卵殻)、ヨウ素(昆布・海藻)、ビタミンD(卵・イワシ・タラ)、ビタミンE(卵・オリーブオイル・アーモンドオイル)、ビタミンC(野菜・果物)、オメガ3脂肪酸(刺身・魚油)、抗酸化成分(野菜・ハーブ)など。

よくある質問

体重が小さな子は1日分ずつ小分けするのが大変ですよね。いくつか方法があります。

  • 1日ではなく、数日分ずつまとめて与える。野生時代は毎食きっちり同じものを食べていたわけではないため、特定の病気がない限り栄養素に多少の変動があっても大丈夫。私たち人間と同じですね。
  • 複数種類の内臓肉を同量ずつ混ぜてミキサーにかけ、1日分または数日分に分けてアイストレイに入れて凍らせておき、必要な時に1つずつ取り出す。
  • 冷凍庫にアイストレイを入れておくスペースがない場合は、一旦凍らせた後にアイストレイから取り出し、冷凍保存袋に移し変える。こうすると後で1つずつ必要な分だけ取り出すことができます。アイストレイがなくてもバットやガラス皿などにくっつかないように並べて凍らせてから、同様に保存袋に移し変えることができます。
  • 小分けせず、ミキサーで混ぜたものをそのまま冷凍保存袋に入れるか、ラップではさんで薄く板状に伸ばしてから凍らせてもOK。使うときに必要な分だけ割ったり、包丁で切ることができます。
  • ミキサーがない場合は、角切りにし(2〜3 cm角でだいたい5 g)、アイストレイやバットを使って凍らせる。
  • 内臓肉は半冷凍してから切ると、汚れにくく扱いも簡単です。
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いろいろな方法を試して自分に一番合う方法を見つけてくださいね。

確かに慣れていないと血なまぐさいですよね。マスクと調理用手袋を使うといいでしょう。

下ごしらえなしで売られている腎臓肉は尿臭がすることがあります。大きめに分割して水か冷ました緑茶につけ、冷蔵庫に数時間から一晩置いておくとかなり臭いが取れます。

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どうしても無理なら自然乾燥したペット用のおやつやボイルしてある製品から試してみては?

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大丈夫です

小型犬や猫では1日量が少なくなるので小分け保存するのが大変ですよね。野生時代は何日も内臓肉を食べられないことが普通でした。数日〜1週間単位で必要な量を与えるようにしましょう。

内臓肉は種類によって薬膳効果や栄養素の量が異なります。偏りを防ぐためには複数のものを与えるのが理想ですが、入手できない場合もあるでしょう。できる範囲で与え、足りない栄養素は他の食材やサプリメントで補うようにしましょう。

人の食用としてスーパーなどで販売されているものか、ペットの生食用に販売されているものなら大丈夫です。生で与える際の注意点を必ず守って与えてください。

生ものを与える際の注意点生食における食中毒・感染症予防ガイド
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大丈夫です。内臓肉は現代の犬猫に一番欠けている薬膳食材です。

内臓肉はビタミンやミネラル以外にもホルモンやサイトカイン、酵素などのシグナル分子を豊富に含んでおり、機能が弱ってきた臓器の働きを助けてくれます。例えば、腎臓の機能が低下してきたら腎臓肉マメ)を、膵外分泌不全の場合には膵臓肉(ドモ)を多めに与えます。

末期の腎臓病や肝臓病など、一部の疾患ではタンパク質やリンの摂取量の制限が必要になる場合があります。でも食事全体から見ると内臓肉の給与量はわずかなので(体重の0.1%または主食の5%)、タンパク質量やリン量にはほとんど影響することがありません。それよりも薬膳効果の方が大きいでしょう。タンパク質やリンの量を制限したい場合は、まずは他の不必要な食材をカットすることから始めましょう。

脂質を抑える必要がある場合に気をつけるのはハツや腸管、タンです。ハツや腸管は周りに脂肪がたくさんついていることが多いので、これを取り除いてから与えましょう。タンは避ける必要があるかもしれません。

  • 日本・米国・豪州・EUの食品成分データベース
  • Spitze AR, Wong DL, Rogers QR, Fascetti AJ: Taurine concentrations in animal feed ingredients; cooking influences taurine content. J Anim Physiol Anim Nutr (Berl). 2003 Aug;87(7-8):251-62.
  • Robinson FA. The Vitamin B Complex. 1951. John Wiley & Sons. New York.