獣医師による手作り食・自然療法ガイド

健康バランスの鍵!腸の修復ガイド

健康な体は健康な腸から。これは犬や猫でも同じです。下痢や便秘、アレルギーだけではなく、自己免疫性疾患や脳神経疾患、関節炎、行動問題、がんなど、一見何の関係もないような病気にも腸の異常が根底に潜んでいることがよくあります。

腸は食物を消化吸収したりウンチを作るだけの器官ではありません。体を有害な物質や病原菌から守るバリアとして24時間働き続けています。腸には最大の免疫組織も備わっており、全身の免疫系のバランスにも大きな影響を与えています。

さらに、腸には何十億もの善玉菌や悪玉菌が住んでいます。その総数は体全体の細胞数にも匹敵するほど。さまざまなシグナル分子や代謝物質を分泌して腸内環境を整え、腸管と脳神経系との連絡を直接的・間接的に調節しています。

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私たちの心や体を支配しているのは脳ではなく腸と腸内細菌かも?

3Rで腸の力を取り戻す

腸の健康的な環境は、生まれてくるときに母犬や母猫の産道に住む細菌を摂取することから始まります。その後、周囲の環境中にいる善玉菌や悪玉菌を含めて多種多様な菌を取り入れながら発達していきます。生の食物にはさまざまな菌が付着しているため、食事も大きな役割を果たしています。例えば、野菜に塩を加えるだけでお漬物ができるのもこれらの菌のおかげですし、最近ではマンゴーにも善玉菌が含まれていることがわかり話題になりました。

現代の犬猫はこの腸の自然な発達過程が失われた状態になっています。帝王切開で生まれる機会や抗生物質治療を受ける機会が増え、新鮮な食物に付着していた菌はペットフードの高熱加工中に死滅。1〜2種類のプロバイオティクスが後付けされていればまだよい方でしょう。私たち飼い主が何気なく選んだおやつにも防腐剤、穀類、グルテンなど、腸粘膜や免疫系を傷つける成分がふんだんに使われています。こういう環境で育った犬猫が子どもを産んだ時、果たしてバランスのとれた健康的な細菌叢を次の世代に伝えることができるでしょうか。

腸の修復プログラムは、今ある不調を緩和するだけでなく、将来の病気を予防するためにペットフードで育ったすべての犬と猫に推奨されます。

腸の修復ステップ(3R)

1. 腸の炎症を起こしやすい物質を生活から取り除く
  1. アレルギーがある場合は、その原因を取り除く。
  2. アレルギーや消化不良を起こしやすい乳製品と牛肉は与えない。
  3. 腸バリアを傷つけるグルテンレクチンを含む食品を与えない。
  4. 猫の場合は、炭水化物食品の摂取を一切やめること。
  5. 犬の場合は、米、トウモロコシなどの穀類をサツマイモに切り替える(与えなくてもよい)。
  6. 砂糖、精製された穀物、でんぷん質の多い芋類など、インスリン抵抗性を引き起こしやすく体内の炎症を促進する食品は与えない。これらの食品はちょっとした刺激物や悪玉菌による腸の炎症も増強させる。
  7. ペットフードを与えている場合は手作りに切り替える。カロリー密度が高く精製されすぎている食事は、食後に血糖値を上げやすく、慢性炎症の原因に。食事を作る時間がなければ、添加物、防腐剤、上述のグルテンや過剰な炭水化物原料を含まず、過度な加工処理が行われていないペットフードに切り替える。
  8. 浄水器で濾過した水を与える。
  9. 免疫系のバランスを崩すワクチンの接種は最小限にする。年1回の混合ワクチンは、もうエビデンスに基づく医療とはいえない。
  10. 抗生物質やステロイド、NSAID等の薬剤の不必要な使用をできるだけ避ける。
  11. ペットホテル宿泊などのストレスを避ける。または、ストレス対策を取り入れる。
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2. 腸を休ませ自己修復させる時間を与える
  1. 週1回、夜ごはんを与えない日を作る(朝に1日分の食事を与えたら次の日の朝まで水かボーンスープ以外は何も与えないようにし、腸が完全に空になる時間を作る)。
  2. 下痢などの消化器症状がある場合は、1〜2日絶食。
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3. 腸の回復を促すサプリメントや食材を取り入れる
  1. ビタミンD3:腸細胞の再生に重要なビタミン。イワシ、卵などを定期的に与える。
  2. プロバイオティクス乳酸菌製剤、グリーントライプ、発酵食品など。
  3. プレバイオティクス動物性繊維
  4. オメガ3脂肪酸オメガ6脂肪酸
  5. ボーンスープ
  6. スリッパリーエルム消化管の炎症を抑えて修復。善玉菌を育てる。20〜40 mg/kg・1日2〜3回。便秘したら量を減らす。マーシュマロウエキスでもよい(体重10 kg あたり 0.5〜1.5 mLまたは250 mg〜750 mgを1日2回に分けて与える)。2〜3週間継続。
  7. グルタミン:腸細胞のエネルギー源として腸内壁の再生に役立つ。猫・小型犬 250 mg・中型犬 500 mg・大型犬 1000 mgで1日1〜2回を目安に。てんかん等の神経症状がある場合や肝障害がある場合は、かかりつけ医に確認してから与える。
  8. リコリス(甘草):消化管粘膜の再生を促進。長期使用はしない。唾液分泌が多い、太りやすい体質の犬猫には使用しない。 乾燥ハーブ(30〜100 mg/kgから・1日2回)・チンキ剤(1〜3滴/kgから・1日3回)・乾燥濃縮エキス(20 mg/kgから・1日2回 )
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