獣医師による手作り食・自然療法ガイド

突然の下痢・・・自宅でできることは?

拾い食いや食あたり、アレルギー、ストレスなど、犬も猫もさまざまな理由で急に下痢を起こすことがあります。単純な下痢なら放っておいても数日間で自然と治癒しますが、ちょっとしたサポートで回復を助けてあげることができます。

注意
ぐったりとして元気食欲がなかったり嘔吐が激しい場合はすぐに病院に連れて行きましょう。血液が混ざっている場合も要注意です。

1. まずは出しきる

寄生虫、細菌、ウイルス、毒素、アレルゲン。下痢は体の中に入ってきた悪いものを排除するための体の防御機構です。無理に下痢を止めると、逆に原因物質を長く体の中に留めてしまうことに。まずはできるだけ出してしまいましょう。

犬も猫も外出や運動は控え、室内の落ち着いた環境で休ませてあげます。ぬるま湯で濡らした柔らかいタオル(または赤ちゃん用おしりふき)でおしりの汚れを優しくふきとり、赤くなっているようならカレンデュラバーム(アルコール不使用のもの)を薄く塗ります。

MEMO
便や息がいつもより臭いなと感じたら感染症の可能性があります。病院で便検査をしてもらい、適切な抗生物質を処方してもらいましょう。

2. 絶食と水分補給

下痢を起こした腸管では、炎症によって腸の内面を覆っていた粘液や善玉菌叢が剥がれて下痢と一緒に流れ出し、ダメージを受けた腸細胞がむき出しの状態になっています。

腸がダメージの修復に専念できるよう最初は食事を控えましょう。かわいそうですが、ここが正念場。治らないうちに食物を与えてしまうと、ダメージを悪化させてしまいます。単純な下痢であれば半日から2日間程度の絶食で回復します。

サプリメントやハーブもすべて中止し、胃腸の負担をなるべく軽くしてあげましょう。投薬中の場合は、かかりつけの病院に確認してください。食欲がない時や下痢の時には与えてはいけない薬があります。

注意
ペットフードを食べている太り気味の猫ちゃんは24時間以上絶食すると脂肪肝になることがあるので注意しましょう。

下痢を起こした時は、脱水しないよう水分補給が大切です。絶食中でも新鮮な水をいつでも飲めるようにしておき、脂を除いたボーンスープ、肉や魚の煮汁、はちみつ湯などを数時間おきに与えましょう。

ボーンスープは天然の電解質溶液。作り置きして冷凍庫に常備しておくといざという時に役立ちます。

腸の修復を助けるハーブ

スープにスリッパリーエルム (体重5 kgあたり小さじ1/4杯を1日数回)を混ぜて与えましょう。腸細胞を保護して腸粘膜の修復を助け、ダメージからの回復を早めてくれます。いつも与えている乳酸菌製剤があれば足してあげてください。スープに混ぜると飲まなくなってしまう場合は、はちみつに練り混ぜて口の中に塗ってなめさせます。

スリッパリーエルム

3. ゆっくり食事を再開

絶食を半日〜1日続け、下痢もおさまっているようなら、少量の食事(加熱食)を与えてみましょう。ゆでてほぐした鶏のささみ、白身魚など、脂肪分が少なく淡白なものがおすすめです。食物アレルギーの場合は、確実にアレルギーを起こさないとわかっている食物を与えます。

1〜2時間待って、食べたものが下痢になって出てきてしまった場合は、絶食をあと半日〜1日続けます。

数時間待っても下痢を起こさなければ、再び少量の食事を与えましょう。1〜5日かけてゆっくりと元の食事に戻していきます。完全に回復するまでスリッパリーエルムとスープによる水分補給を続けてください。

野菜や炭水化物が好きな子には、柔らかくゆでたにんじん、かぼちゃ、さつまいも、またはポテトをミキサーで混ぜてスープに。少量のアップルソースもOK。

数日経っても治らない場合は

下の「急性下痢の自然療法」を試してみましょう。絶食を長く続けると今度は逆に腸細胞の萎縮を招くので注意が必要です。1〜2種類の食材を使ったシンプルで低脂肪な食事をミキサーで混ぜて、消化吸収しやすい流動食にして与えましょう。

なかなか治らない、一度治ったのにしばらくしたらまた下痢になった・・・というような場合は、かなり重症か、何か病気が隠れている可能性があります。いつも軟便気味なのが時々下痢になるような場合も注意が必要です。

なるべく早いうちに病院で検査を行い、原因と症状に合わせた対策をとりましょう。

昨日まで健康で何も異常がなかったのに突然下痢が始まることを「急性下痢」と呼びます。さまざまな原因が考えられ、軽度の場合は自然治癒することもよくあります。数日経っても治らない場合、嘔吐・腹痛・出血が伴う場合は必ず病院で検査しましょう。

  • 寄生虫・細菌・ウイルス
  • 腐った食物・汚染水の摂取
  • 熟していない果物・野菜
  • 食べ過ぎ
  • 毒物・化学物質の誤飲
  • 食物アレルギー
  • 食物不耐性(特に乳製品)
  • 急性の膵炎・肝炎
  • ストレス
  • 異物誤飲
  • 医薬品の副作用など

2週間以上続く下痢、一度治ったように見えてもまた繰り返し起こる下痢を「慢性下痢」と呼びます。小腸に異常がある場合、大腸に異常がある場合、胃腸以外の病気が原因になっている場合があります。早めに原因を特定することが対策の第一歩です。

  • 消化障害
  • 吸収障害
  • 食物アレルギー
  • 炎症性腸疾患(IBD)
  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 細菌異常増殖症(SIBO)
  • 寄生虫症
  • 真菌症
  • 腫瘍
  • 潰瘍・びらん
  • リンパ管拡張症
  • 蛋白漏出性腸炎など

胃腸以外の病気

  • 膵炎・膵外分泌不全
  • 肝障害
  • 腎臓病
  • ストレス
  • 副腎皮質機能低下症
  • 甲状腺機能亢進症など

自己判断はキケン。必ず病院で診断を受けましょう。

急性下痢の自然療法

天然クレイ

ベントナイト(モンモリロナイト)、カオリンなどの天然の粘土を細菌や毒素、水分の吸着に使うことができます。内服用のものを購入し、体重5 kgあたり小さじ1/8〜1/4を目安に純水と混ぜて1日2〜4回、食事や投薬の1〜2時間前に与えます。金属製のスプーンや容器は使わないようにしましょう。

スタッフ一押し!

天然クレイとペクチン、善玉菌を配合した動物用医薬品も販売されています。

参考 犬の急性下痢におけるベントナイト・ペクチン・プロバイオティクス等を含む動物用医薬品の効果米国獣医内科学会誌に掲載された論文にアクセス

通常は3日以内に効果が見られますが、7日間続けても改善が認められない場合は中止しましょう。

キャロブパウダー

スリッパリーエルムの代わりに使うことができます。体重1 kg あたり1日 1 gを目安に。スープに溶かして、数回に分けて与えます。犬猫用のクッキーの色付けにチョコレートの代用として使われていることがよくあります。

ベルベリン

殺菌、収れん、粘膜保護作用がある植物由来の化合物です。

ゴールデンシール、オレゴングレープルート、オウレンなどのハーブに含まれていますが、ディアバスター、デルクリアー、フェロベリンなどの名前で動物用医薬品として止瀉薬のゲンノショウコと一緒に配合されています。かかりつけの病院で処方してもらいましょう。

カモミール

ごく軽度の下痢、大型犬のストレス性の下痢に。抗炎症効果があり、過敏になった腸神経を鎮めて異常な腸蠕動を抑制。チンキ剤の場合は体重5 kg当たり1日0.2〜0.4 mLを数回に分けて与えます。ハーブティーを利用することもできます。

手作りハーブブレンド

「腸粘膜の保護」「炎症を抑える」「抗菌」「腸の異常な動きを正常化」するハーブを組み合わせると全方向からサポートができ、効果が高くなります。下の組み合わせはよく使われる一例です。

ゴールデンシール抗菌・収れん・抗炎症
マーシュマロウ腸粘膜の保護と修復
クランプバーク腸の痙攣を抑制・収れん
カモミール抗炎症・鎮静

リキッドハーブ(チンキ剤)をそれぞれ同量ずつ混ぜて体重 5 kg あたり1日1 mLを数回に分けて与えます。スープに混ぜてあげましょう。下痢が治っても、腸の修復が完了するまで2〜3週間継続します。

漢方薬

急性の下痢には、外因性(細菌感染、食あたり、食べ過ぎなど)の内因性(食物アレルギー、ストレスなど)どちらか、発熱があるかないかによって使い分けます。

使用例熱あり・暑がり熱なし・寒がり
外因性葛根黃蓮黃苓湯藿香正気散(クロストリジウムなどによる感染)
保和丸・平胃散(食べ過ぎ)
内因性三仁湯
四妙散
補中益気湯
平胃散(消化不良)
胃苓湯
補中益気湯

よくある質問

栄養バランスより治療を優先してください。

下痢の回復期は淡白な食材1〜2種類に制限し、サプリメントも中止してなるべく胃腸の負担を軽くすることが理想的です。ただ、それだとカロリーやタンパク質は足りても、ビタミンやミネラルが足りなくなりますよね。でもここは胃腸の調子を取り戻すことが先決です。どちらにしても腸細胞が回復しないと、サプリメントをうまく吸収することもできません。

犬猫の順応力や再生能力は非常に優れています。1〜2週間なら栄養バランスが崩れてもまったく心配する必要はありません。下痢が治ったらまた以前の食事に戻せば大丈夫です。

併発症があり、特定の食事療法やサプリメントが必要な場合は、かかりつけの先生に相談しましょう。

慢性下痢(2〜3週間以上続く下痢または1度治ってもまた再発する下痢)には、アレルギー、消化障害、腸疾患、内臓疾患などさまざまな原因があり、対策は原因の治療を行うことです。まずは病院で検査を行いましょう。薬や食事で下痢だけを一時的に治しても、原因を治さない限りはまた再発します。

慢性下痢は犬猫のSOSサイン。潜んでいる原因を見つけてあげましょう。

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