獣医師による手作り食・自然療法ガイド

十全大補湯

「10種類の生薬で完全に大いに補う」という意味を持つ十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)。その名のとおり、全身に働きかけ、体を温めて弱ってしまった気力や体力、免疫力を回復してくれるお薬です。

十全大補湯の働き

気・血・水・陽を補ってくれる十全大補湯。病後や術後、長引く病気、加齢などに伴う消耗、衰弱、食欲不振、体重低下、貧血、手足の冷えによく使用されており、秋から冬の寒い時期に調子が悪くなる犬猫の体質改善にも使うことができます。

十全大補湯の大きな特徴は全身の滋養強壮効果と末梢の血行促進効果。人参と黄耆の2種類のアダプトジェンが、ホルモン系や免疫系、自律神経系に働きかけ、ストレスに対する抵抗力を高め、全身に幅広い滋養強壮効果をもたらします。また、地黄と芍薬が寿命を左右する腎の健康をサポート、当帰と人参は骨髄に直接作用して、貧血や免疫力を改善します。

気・血・陽が不足すると末梢の血行が滞り、手足の冷え、皮膚・被毛・爪の乾燥といった症状が現れます。夢をみる頻度が増えたり、ドライマウスになることもあります。十全大補湯は、血液の量と巡りを改善し、体を温める複数の生薬の作用により手足の冷えや皮膚の乾燥を改善。寝たきりの子の褥瘡にも効果を示します。

こんな子に向いています
  • 秋〜冬に元気がなくなる子の体質改善に。
  • 高齢期で特に病気はないけれど、体力や気力が落ちてきたと感じる時に。
  • 病後、術後、長引く病気などによる気力や体力の低下、食欲不振、貧血に。
  • がんの治療中に。衰弱した体を助け、抗がん剤や放射線治療の副作用を抑えてくれます。

前足と後ろ足の冷えが気になり、皮膚・被毛が乾燥していれば、十全大補湯が合う証拠です。

こんな子には使えません
  • 暑がり・暑さに弱い(涼しいところを好む、暖かくなるとすぐにパンティングするなど)
  • 冬に調子がよくなる
  • 特に皮膚・被毛・爪の乾燥がない
  • 自己免疫性疾患が疑われる

十全大補湯と同じように衰弱や体力の低下に使用する漢方薬として、暑がりさんには六君子湯や人参栄養湯、乾燥症状や貧血がなく、特に胃腸の調子が気になる子には補中益気湯、帰脾湯などがあります。

成分

  • 身体的・精神的ストレスへの抵抗力を高めるアダプトジェン。視床下部・下垂体・副腎系と交感神経副腎系を正常化。
  • 気を補う。幅広い滋養強壮作用を持つ。
  • 肺・心の気を補う。
  • 腎気を補うことで間接的に脾(胃腸)をサポートする。
  • 腎陰・腎血を補う。
  • おだやかに温める。
  • 腎臓の血流を改善し、腎虚血、腎高血圧、腎線維化、貧血を緩和。
  • 身体的・精神的ストレスへの抵抗力を高めるアダプトジェン
  • 気を補う。
  • 骨髄に働き、貧血を改善、免疫力を高める。
  • 去湿(利尿)作用
  • 体を温め、気血を作る。
  • 腎臓を温め、腎気を養うことで間接的に脾(胃腸)をサポートする。

シナモンのことです。

  • 血の量と循環を維持する。
  • 腸を潤し、排便を促進する。
  • 浮腫・腹水を緩和。
  • 冷感や寒気を散らす。
  • 鎮痛作用。
  • 脾(胃腸)の気を強化。
  • 去湿
  • 漢方薬の体内動態を促進。
  • 脾(胃腸)の働きを強化。
  • 去湿(利尿)作用。
  • 神経を安定させる。
  • 補陰
  • 血の不足と停滞を改善する。
  • 腎陰を補うことで腎気を養う。
  • 血を巡らせる。
  • 気の制御を助ける。
  • 他の生薬の作用を助けたり、刺激を和らげて漢方薬全体を調和させる。

用量・用法

  • 体重 1 kg あたり有効成分量 60〜75 mg から開始し、1日2回に分けて食事とともに与える。副作用がない場合は、用量を2〜3倍まで増やしてもよい。
  • 2〜3週間おきに症状を確認し、その都度、処方を調節する。
漢方薬やハーブを使用する前の注意事項用量・用法・上手な飲ませかた

適応症

  • 病後や術後、長引く病気、加齢などに伴う消耗、衰弱、食欲不振、体重低下、貧血、手足の冷え
  • 低血圧
  • 肺の腫瘍
  • 抗がん剤・放射線治療中の副作用(骨髄抑制・貧血・食欲不振・消耗)の緩和
  • 悪液質の予防・緩和
  • 腫瘍随伴症候群(食欲不振・貧血)の緩和
  • 褥瘡の緩和