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2016-2017 ⓒ Wholly Vet ナチュラルアニマルヘルス

犬猫にも今流行のアダプトジェンを活用

2016/12/01

犬猫にも今流行のアダプトジェンを活用しよう

最近、アダプトジェンという言葉がネットでも見かけられるようになり、飼い主の方や獣医師の先生方から問い合わせを受けることが多くなっています。

アダプトジェンとは、物理的・精神的なストレスに適応し(=アダプト)、抵抗力を高めてくれる生理活性物質のことで、数種類のハーブが知られています。

今回の記事では、私たちが実際に診療で使用しているアダプトジェンについてまとめました。

アダプトジェンの作用

私たち哺乳類の体にストレスが加わると、ストレスに対して適切な対処ができるよう脳から身体にさまざまな指令が出されます。この指令系統には、主にコルチゾールなどのストレスホルモンを放出する視床下部-下垂体-副腎系、アドレナリンなどの興奮性のホルモンを分泌する交感神経副腎系、生殖機能を抑制する視床下部-下垂体-性線系、痛みの感じ方を調節する疼痛抑制系があります。

これらは、ストレスに対処できるよう体の準備態勢を整えてくれるための仕組みで、例えば、常に意識の覚醒状態を保ち、すぐに筋肉を使えるよう血糖値や呼吸数、心拍数、血圧が上昇する一方で、不必要な消化機能や痛覚が抑制されるといった身体の変化が現れます。

ストレスにうまく対処でき、ストレスの原因が取り除かれれば、脳からの指令も解除され、体はすぐに通常の状態に戻ります。しかし、ストレスが長く続くと、異常な活性化または抑制化が続いた組織や機能に障害が生じるようになり、それと同時に脳からの指令系も疲弊し、正常な反応を保てなくなります。その結果、心循環器系の異常、消化機能や免疫力、繁殖力の低下、自律神経系のアンバランス、自傷、沈うつなどの精神状態の異常が現れるようになります。

もしかして、みなさんの犬や猫の中にもペットホテルに預けた後に必ず病気になる子や行動問題を起こす子がいるのではないでしょうか。

アダプトジェンは、ストレスの指令系統に働き、その機能を調節することでストレスに対する適応力を高める、異常に亢進または抑制された機能を正常化する、ダメージを受けた組織の修復を助けるといった作用をもたらします。また、最近では精神的なストレスによって細胞内でエネルギー生産を行っているミトコンドリアの機能にも変化が現れることがわかってきていますが [1]、アダプトジェンの中にはミトコンドリアの機能の調節作用を持つものもあります。

どんな時にアダプトジェンを?

  • ペットホテルなどに預ける時、引越し、旅行など・・・あらかじめストレスが予想される場合には、ストレスが始まる前から与え始めることでストレスにうまく適応させ、ストレスによる内臓のダメージを最小限に抑えることができます。

 

  • 家族との死別など、家庭内での環境に変化があった時

 

  • 保護施設で保護中、または、新しい家に引き取られる時

 

  • 手術・疾患からの回復期・・・手術や病気もストレスとして考えましょう。

 

  • がん、腎臓病、肝臓病、心臓病、内分泌系疾患などの慢性疾患時

 

  • 抗がん剤治療・放射線療法などの補助または副作用の抑制に

 

  • アジリティなどの激しい運動や訓練を行う犬・・・疲労からの回復、運動・認知能力の向上に役立ちます。

 

  • 高齢・衰弱動物・・・アダプトジェンの多くは強壮作用があるため、加齢に伴い低下したさまざまな機能の再活性化を促します。

アダプトジェン作用のあるハーブ

薬学的には(1)治療用量では有害な作用をもたらさない(2)心理的、身体的、環境的ストレスに対する身体の抵抗力を高める(3)ストレスによって異常をきたした生理学的機能の正常化を促進するという3つの基本条件を満たすものがアダプトジェンとして認められており [2]、特に犬猫では次のものが安全に広く使用されています [3,4]。

この他、アシュワガンダ、霊芝、コドノプシス(ツルニンジン)、クコ、ロディオラなども使用します。

アダプトジェンとして使用できる漢方薬

複数のハーブを含む漢方処方を使用することで、ストレス経路だけではなく、体全体のバランスを整えることができます。

  • 逍遙散・・・精神的ストレスに。柴胡・リコリスを含む。
  • 人参栄養湯・・・慢性疾患など長期のストレスによる疲弊に。オタネニンジン・ゴミシ・リコリスを含む。
  • 六君子湯・・・慢性疾患など長期のストレスによる疲弊、悪液質に。オタネニンジンを含む。
  • 補中益気湯・・・ストレス性の胃腸炎・消化不良に。オタネニンジン・キバナオウギ・リコリス・柴胡を含む。

アダプトジェンの選び方

特定の症状が現れたり、特定の臓器がストレスを受けやすい場合は、それに対して効果のあるものを選びます。

例えば、家族の留守にお腹の調子が悪くなる子はリコリスやチョウセンゴミシを使用します。不安症が激しい子には、精神安定効果のあるものから選びましょう。腎臓の場合は冬虫夏草がおすすめです。

特定の症状ではなく、なんとなく元気や食欲がなかったり、複数の部位に異常が現れるような場合は、作用範囲の最も広いエゾウコギやオタネニンジンを試してみましょう。

アジリティなど、ストレスの多い運動や作業を行う犬の場合は、エゾウコギ、オタネニンジン、冬虫夏草の中から選ぶとよいでしょう。

あらかじめストレスが予想される場合は2~3週間前から投与をはじめ、ストレスが過ぎた後も数週間ほど継続して与えます。

注意

ハーブを初めて使用する際は、必ず少量から開始し、副作用などの異常がないか様子を見ながら1~2週間おきに増量していきます。品質が信頼できるメーカーのものを選び、他のハーブが含まれていないか、また、添加物が使われていないか、必ずチェックしましょう。ハーブの使用に関連して報告されている副作用の多くは、過剰投与や品質の問題、添加物が原因です。

参考文献

  1. Picard et al. Mitochondrial functions modulate neuroendocrine, metabolic, inflammatory, and transcriptional responses to acute psychological stress. PNAS. 2015 Dec 1;112(48).
  2. Winston & Maimes. Adaptogens: Herbs for Strength, Stamina, and Stress Relief. Healing Arts Press. 2007. 日本語版「アダプトゲン―ストレス「適応力」を高めるハーブと生薬」
  3. Wynn & Fougère. Veterinary Herbal Medicine. Mosby 2006.
  4. Chen & Chen. Chinese Medical Herbology and Pharmacology. Art of Medicine Press. 2004.

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