逍遥散 | Wholly Vet

逍遙散（しょうようさん）は、犬猫において非常によく使用される漢方処方です。肝臓と胃腸の不調和によって生じるさまざまな症状を緩和します。

胃・脾・肝の関係

漢方医学では、食物は胃で機械的な消化を受けたあと脾で血液やエネルギーなどの体に必要な栄養物に分解されると考えられています。「脾」は、現代医学の「脾臓」とは概念が異なり、消化吸収器官にあたります。膵臓や小腸に近い存在です。胃脾で取り出された滋養の高い栄養物含む血液やエネルギー（気）は肝に送られ、そこから全身に送り出されます。

消化機能が弱まったり、体質に合わない不適切な食事によって十分な栄養分や血液を肝臓に送れなくなると、全身の血液やエネルギーの流れが滞り、情緒不安、被毛が乾燥するといったさまざまな症状となって現れます。また、全身のエネルギーの流れが停滞することにより、消化器官の機能がさらに落ち、脾から肝への連携がいっそう弱まっていくという悪循環に陥ります。

逍遥散の役割

逍遙散は、弱まった胃腸をサポートし、正常化することで、この負の循環を断ち切り、十分な栄養物が再び肝臓に届けられるように改善してくれるお薬です。

成分

トウキ　シャクヤク　サイコ　ビャクジュツ　ブクリョウ　カンゾウ　ハッカ　ショウキョウ

用量・用法

1日量として体重1 kg あたり 60〜75 mg から開始し、1日2回に分けて食事とともに与える。副作用がない場合は、用量を2〜3倍まで増やしてもよい。
2〜3週おきに症状を確認し、その都度、処方を調節する。
最小量であれば長期投与可能。

適応

太りにくいまたは皮膚が乾燥しやすい子の無駄吠え、分離不安症、ドライアイ
急性から慢性期に移行した肝炎や肝硬変
肝障害と炎症性腸疾患（IBD）の併発
ストレスによる行動問題、胃腸症状、発情周期の異常

こんな症状が気になるときに…

①脾気虚（胃腸の弱まり） ② 肝血虚 ③肝気虚のサインが確認され、明らかな内湿の徴候がない症例。

脾気虚の症状

軟便
便に未消化物が混ざっている
食欲低下
太れない

肝血虚の症状

皮膚・被毛の乾燥、細かく白いフケ
ドライアイ
怯え・不安症
粘膜蒼白
頻繁に夢を見る
アルブミン値の低下

肝気虚の症状

肝酵素・コレステロール値の上昇
便秘
腹部膨満
イライラ・落ち着きがない
沈鬱

MEMO

特にイライラや暑がりが気になる場合、夏の暑い時期には熱を鎮めてくれる生薬が配合された「加味逍遙散」がおすすめです。

あなたの犬猫は夢を見ますか？それは病気のサインかもしれません

よく使用される疾患

消化器系

消化機能の低下による慢性下痢／軟便・体重の低下・食糞症
炎症性腸疾患（IBD）
ストレス性過敏性腸症候群（IBS）
慢性肝炎・肝硬変
先天性小肝症

行動問題

しつけ以外の理由で生じる分離不安症、攻撃性、なわばり行動
ペットホテル宿泊などの環境の変化によるストレスで体調に変化が現れる犬猫には予防的投与を行う

その他

乾性脂漏症
軽度の再発性表在性膿皮症
全身性毛包虫症（イベルメクチン不応性）
アレルギー性皮膚炎
ドライアイ（IBD、皮膚症状、肝炎などが併発する場合）

放って置かないで！犬猫の食糞

参考文献

症例報告（犬・猫）

Barrett R. Successful Treatment of Anxiety in a 10 year-old Weimeraner Using the Chinese Herbal Formula Xiao Yao San. J CIVT. 2014 Feb; 3(1): 26-32.
Bauer LA. A Chinese Medical Approach to Cholangiohepatitis in the Dog. J CIVT. 2012 Mar; 2(1): 13-21.
Van Der Laarse, S. Yucca: Treatment of Clinical Depression in a Dog with Xiao Yao San. J CIVT. 2011 Jun; 1(1): 3-8.

基礎・医学研究