2017 / 10 / 15

2017年アメリカ動物病院協会による犬のワクチンガイドライン

アメリカ動物病院協会(AAHA)による犬のワクチンガイドラインが6年ぶりに改定されました。2006年・2011年のガイドラインでは、コア・ワクチン(全頭に接種が勧められるワクチン)の推奨追加接種頻度が年1回から3年に1回に減り、製剤によっては免疫が5〜7年は持続することが正式な見解として加えられ、無駄なワクチンの接種をなるべく減らしたい獣医師の間で歓迎を受けました。

今回のガイドラインでは、それほど大きな変更はありませんが、さらに次の点が新しい選択肢として加えられています。

  • ノンコアに分類されていたパラインフルエンザワクチンをコアに加えてもよい。
  • 追加接種を行う前に抗体価測定検査を行い、追加接種が必要か確認することができる(ジステンパー、パルボ、アデノウイルスが対象)。

2017年 AAHAワクチンガイドラインのまとめ

コアワクチン(全頭の接種が推奨される)

  • ジステンパー + パルボ + 2型アデノウイルス ± 犬パラインフルエンザ(弱毒化/組替え混合生ワクチン)
  • 16週齢以下の子犬の初年度接種:6週齢以降〜16週齢まで2〜4週間隔で複数回接種。感染の確率が高い地域や環境にいる場合は、18〜20週齢でもう1回接種。
  • 16週齢を過ぎた子犬の初年度接種:1〜2回接種。
  • 追加接種:初年度接種後、1年以内に再接種(ブースター)を1回行う。その後は3年以上あける。抗体価測定検査を行うことで、再接種が必要かどうかを判断することができる。

 

弱毒化/組替え混合生ワクチンによる免疫持続期間は3年を超える。犬パラインフルエンザワクチンは、皮下接種よりも経鼻接種の方が優れた効果が得られる。

  • 狂犬病(不活化ワクチン)
  • 16週齢以下の子犬の初年度接種:12週齢以降に1回接種。1年以内に追加接種を行う。
  • 16週齢を過ぎた子犬の初年度接種:1回接種。1年以内に追加接種を行う。
  • 追加接種:法規制または各製剤の免疫持続期間(1年または3年)に従って追加接種を行う。

ノンコアワクチン(必要に応じて接種)

  • ボルデテラ + 犬パラインフルエンザ(経鼻混合ワクチン)
  • 初年度1回接種。3〜4週齢以上で接種可能。通常は8〜16週齢で行うことが多い。初年度以降は必要に応じて年1回追加接種。

 

接種後48〜72時間で免疫成立。試験によって証明されているボルデテラワクチンの免疫持続期間は12〜14ヶ月。パラインフルエンザワクチンの効果は1年以上持続すると考えられる。2型アデノウイルスとの混合ワクチンとして販売されている場合がある。

  • ボルデテラ(単味ワクチン)
  • 経鼻ワクチン:初年度1回接種。3〜4週齢以上で接種可能。通常は8〜16週齢で行うことが多い。初年度以降は必要に応じて年1回追加接種。試験によって証明されている免疫持続期間は12〜14ヶ月。パラインフルエンザや2型アデノウイルスとの混合ワクチンとして販売されている場合がある。
  • 皮下ワクチン:初年度は8週齢以降に2〜4週あけて2回接種する。初年度以降は、必要に応じて年1回追加接種。免疫持続期間は確立されていない。
  • 経口(経粘膜)ワクチン:初年度は8週齢以降に1回接種。3〜4週齢以上で接種可能。通常は8〜16週齢で行うことが多い。初年度以降は、必要に応じて年1回追加接種。免疫持続期間は確立されていない。
  • レプトスピラ(不活化4種混合ワクチン)
  • 皮下ワクチン:初年度は8〜9週齢以降に2〜4週あけて2回接種。初年度以降は、必要に応じて年1回追加接種。

 

交差防御効果が低いため、2種(カニコーラ + イクテロヘモラジー)より4種(カニコーラ + イクテロヘモラジー + グリポティフォーサ + ポモナ)の方が推奨される。コアワクチンとの混合ワクチンとして販売されるものもある。

  • ボレリア(不活化・組替えワクチン)
  • 皮下ワクチン:初年度は8〜9週齢以降に2〜4週あけて2回接種。初年度以降は、必要に応じて年1回追加接種。ライム病流行地に行く場合は、2〜4週間前までに2回の接種を済ませる。
  • 犬インフルエンザ(H3N2/H3N8型・不活化)
  • 皮下ワクチン:初年度は6〜8週齢以降に2〜4週あけて2回接種。初年度以降は、必要に応じて年1回追加接種。ペットホテルやデイケアなどに預ける4週間前までに2回の接種を済ませる。ワクチンを接種しても感染し、軽度の症状が発生することがある。

私たちが勧める予防接種

  • コアワクチン(ジステンパー・パルボ・伝染性肝炎)

初年度(子犬)に2回接種を行う。2回目接種後に抗体検査を行い、1年以内の再接種が必要か確認する。その後は3年に1回、抗体検査を行い、必要な場合のみ接種する。子犬期にきちんと接種を受けた犬のほとんどは追加接種を一生必要としない。

  • 狂犬病ワクチン

初年度に1回接種する。その後は法規制に従う。

  • ノンコアワクチン
  • 定期的にペットホテルやデイケア施設などに預ける場合:初年度にレプトスピラやパラインフルエンザなどのノンコアワクチンの接種を行う(1回または2回。製品によって異なる)。その後は年に1回、追加接種を行う。多くの施設ではワクチン接種証明書の提出を必要としている。
  • 他の犬とほとんど接触する機会がない犬:ノンコアワクチンは必要なし。ペットホテルに預けることになった場合は、数週間前に接種を済ませる(1回または2回。製品によって異なる)。入院が必要になった場合は、必ず獣医師に伝えること。
  • 動物病院によっては、コアワクチンと組み合わせた4〜9種ワクチンしか取り扱っていない場合があるので確認が必要。
  • 接種が勧められない場合

アレルギー、自己免疫性疾患などの免疫疾患の治療中、内分泌系疾患やがんなどの全身性疾患の治療中、ワクチンに副作用を示したことがある場合、臓器不全がある場合、超高齢など。

今回紹介したアメリカのガイドラインは、北米における感染症の発生状況と承認販売されているワクチンに基づいて作成されたものであり、すべての国や地域に当てはまるものではありませんが、一般的にはウイルス感染症に対するワクチンは3年以上(場合によっては一生)、細菌感染症に対するワクチンは1年程度の予防効果があるというのが世界共通の見解として受け入れられています。

現実問題としては、コアとノンコアを合わせた混合ワクチンを毎年接種する習慣が一部の獣医師の間で根強く残っていること、抗体価検査を行うより追加接種を行った方が手間がかからず価格も安いこと、コアとノンコアを分けた製品が少ないこと、狂犬病ワクチンの毎年の接種が法律で義務付けられていることなど、多くの課題が残っていますが、今回のAAHAのガイドラインは科学的なデータに基づきながら犬の健康と感染リスクを第一に考えており、私たち統合医療の獣医師が理想とするプロトコールにかなり近くなったといえるでしょう。