獣医師による手作り食・自然療法ガイド

ペットフードのもう一つの落とし穴「貯蔵庫ダニ」

酸化脂質、防腐剤、加工副産物、炭水化物、グルテン、レクチン・・・便利なペットフードにはたくさんの危険がひそんでいます。そして、もう一つの落とし穴が貯蔵庫ダニストレージマイト)。肉眼では見つけるのが難しいコナダニやニクダニの混入です。

手作り食に切り替えただけで湿疹や外耳炎、腸炎が治ったという話がよく聞かれますが、その多くは貯蔵庫ダニによる炎症またはアレルギーが原因と考えられています。

貯蔵庫ダニって?

0.1〜0.5 mmという肉眼では確認することが難しい非常に小さなダニで、貯蔵中の穀物や干し草、飼料原料に大量発生しやすいことから貯蔵庫ダニと呼ばれています。1種類ではなく、様々な種類のダニの総称で、ペットフードからは主にアカラス(Acarus)、コナダニ(Tyrophagus)、ニクダニ(LepidoglyphusGlyciphagus)が検出されています。

カビを好んで食物とするため、高温多湿な環境で盛んに増殖し、小麦粉、米、パン粉、チーズ、鰹節、煮干し、きな粉、昆布、味噌、乾麺、ビスケットなど、非常に多数の保存食品から見つかっています。ハウスダストアレルギーの原因であるチリダニと同様に身近な環境中どこにでも存在するため、完全に排除することは非常に困難です。

環境中からドライフードに混入

2008年、欧州・米国獣医皮膚科学会の学会誌において、6社が製造する犬用ドライフードから貯蔵庫ダニが検出されたことが報告され(Brazis 2008)、大きな話題となりました。大手ペットフード会社のロイヤルカナンが参加していた研究ですから、よく正直に報告したなと思ったものです。

この研究では、6社が製造する皮膚管理用の犬用ドライフード10種類の検査が行われています。10種類のフードのうち、2種類には開封時にすでにダニが混入していました。残りのフードについては、開封後、犬舎倉庫(平均室温23.2˚C・平均湿度71%・換気あり)に放置しておいたところ、3週間目からダニが検出されるフードが増え、6週間後には10種類中9種類から検出されるようになりました。粘着テープで閉じておいたフードからもダニが検出されています。

一方、空気が清浄化され、窓のない実験室環境(平均室温16˚C・平均湿度68%)に放置しておいた同種のフードでは、6週間たっても新たにダニが検出されることはありませんでした。

この研究は、ダニによるドライフードの汚染が2つの経路で起こることを示しています。

  1. 開封前からもともとダニが混入している(製造過程で混入)
  2. 開封後に環境中のダニが入り込む

ちなみに、フードの原料の違いによる影響はなく、6週間後もダニが検出されなかった唯一のフードは密閉できるジップタイプのフードでした。

さらに後続の研究では(Gill 2011;Hibberson 2014)、貯蔵庫ダニだけでなくハウスダストマイト(Dermatophagoides)も開封後のドッグフードに入り込むこと、一般家庭での保存中にも混入が起こりうること、そして開封前よりも開封後に汚染される方が圧倒的に多いことが報告されています。ドッグフードと同じように製造・保存されるキャットフードも例外ではないでしょう。

対策は?

すべての犬猫がダニにアレルギーを起こすわけではありません。でも次のような症状が季節に関係なく現れ、他に原因が特定できない場合は、ステロイドやアポキルなどの対症療法に頼る前にダニ対策を行う価値があります。

  • 手足をよくなめる
  • 皮膚に病変がないのにかゆがる
  • 外耳炎になりやすい(耳垢がたまりやすい・耳が臭い)
  • 皮膚に湿疹や赤みがでやすい
  • 嘔吐、軟便などの消化器症状を起こしやすい
  • 気管支炎や喘息のような症状がある(いびきをかく)

密閉容器に入れて冷蔵または冷凍保存

家の中に潜んでいるダニの混入を防ぐため、ペットフードやおやつは2週間以内に使い切れる小さめの袋を購入するか、清潔な密閉容器に小分けします。開封後は、湿気のない冷所または冷蔵庫や冷凍庫で保存しましょう。

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穀物フリーのペットフードやおやつでもカビが生えればダニが繁殖しやすくなります。同様に扱いましょう。

缶詰フードに切り替えるのも一手です。缶詰フードはダニが繁殖しにくく、開封後は必ず冷蔵保存するものです。ただし、製造過程でダニが入り込んでいないとは限りません。

手作り食に変更する

ペットフードにもとからダニが混入している場合は、冷所保存してもアレルギー反応を抑えることはできません。冷凍すればダニ自体を殺すことはできますが、アレルゲンはそのまま残るため、やはりアレルギー反応が起こります。

このような場合は手作り食に切り替え、症状がなくなるかどうか観察を行いましょう。4〜6週間反応を見るのが常道ですが、もっと早く改善が認められることもよくあります。

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