獣医師による手作り食・自然療法ガイド

獣医師がペットの手作り食をすすめる理由

Pawsome 1
よい遺伝子のスイッチをオン
  • 生理活性物質が生きている新鮮な食事でエネルギー&活力がアップ
  • 体質を改善して肥満やがんなどの病気を未然に防ぐ
  • 万病のもと、炎症を起こさせない
Pawsome 2
悪い遺伝子のスイッチをオフ
  • ペットフードの防腐剤や人工添加物、農薬やダニによる汚染、副産物・・・不要なものを避け、体の負担を軽くする
  • 炭水化物、酸化脂質・・・炎症や酸化ストレスを起こすペットフードの成分から体を守る
Pawsome 3
犬猫が大喜び
  • 幸福感は長寿と健康に直結
  • 飼い主とペットの絆が深まる
https://www.whollyvet.com/wp-content/uploads/2019/03/Bear-grey-background.jpeg

健康な食事で心も体も満たされ、飼い主さんを信頼の目で見つめる動物たちを見るのは獣医師にとっても大きな喜びです

2000年代初めに人の遺伝子の全配列が解読されたのに続き、犬でも2003年に「シャドウ」という名前の雄のプードルで75%の遺伝子の配列が解読され、2005年に雌のボクサー「ターシャ」で全配列の解読が完了しました [1,2]。そして2007年には猫の「シナモン」でゲノムの解読が完了 [3]。

それから10年以上が経過。この間、毎日の食事がどのように遺伝子や遺伝子の発現に影響し、疾患の予防や発症に寄与しているかを探る「ニュートリゲノミクス」「ニュートリジェネティクス」という研究が進み [4]、現在までにさまざまなことがわかってきています。

人間と同じように、食事はペットの幸せと健康、そして寿命に非常に大きな影響を与えています。そして、何を食べさせるかは他の誰でもない飼い主さま自身が決めることです。

「病院で勧められたから」「◯◯さんも使っているから」ではなく、「なぜ」このフードがうちのコに合うのかを考えて食事を選べるようになりましょう。

新鮮でバランスのとれた手作り食は病気を予防する最大の秘訣

手作り食に関する飼い主様アンケートまとめ(2015〜2016年)

ワクチンや年1回の健康診断を中心とする予防医学が浸透し、”健康によい”ペットフードがこれだけたくさん出回っているのに、病気になって来院する犬猫があとをたたないのはなぜなのか・・・ 病院で診療しながら私たちはずっと疑問に思っていました。

その大きな答えの1つが市販のドッグフードやキャットフードでした。健康によいと信じて疑わなかったペットフードが、実は人間の食事でいうファストフードやインスタント食品とまったく同じだったのです。犬猫本来の生態ではなく、人間にとっての便利さと価格を重視して作られています。

肉食動物の遺伝的背景を無視した安価な炭水化物食品や穀物の多用は犬猫の消化器系に負担をかけ、高いカロリー密度、長期保存用の防腐剤、加工・貯蔵中に発生する有害な副産物は体内で炎症や酸化ストレスを起こします。また、製造加工の過程でビタミンや抗酸化成分など、自然の食物に含まれている大切な栄養素の多くが活性を失います。そして、それを補うために化学合成された栄養素が後付けされているのです。

このようなペットフード中のマイナスの因子は慢性的な炎症状態を引き起こし、悪い遺伝子のスイッチを入れる(またはよい遺伝子のスイッチを切る)よう働きます。これが長く続くことによって肥満や糖尿病といった生活習慣病から皮膚病、関節炎、アレルギー、がん、内分泌疾患までさまざまな疾患が起こっていたのです。

愛犬や愛猫の耳が臭うので病院やグルーミングサロンで相談したら「動物だから多少は仕方ない」「定期的にクリーニングをするしかない」と言われたことはありませんか?こういった犬猫なら”自然”と思われているようなことも実は食事が原因です。新鮮で栄養バランスのとれた手作り食を食べている犬猫の耳はそうじをしなくても臭いません。

犬猫本来の生態に適している自然素材の食事は、体内で余分なものの蓄積や炎症、酸化などのストレスを起こしにくく、悪い遺伝子のスイッチを切り、よい遺伝子のスイッチを入れることができます。

こういった犬猫の生物学や栄養科学情報に加えて、伝統医学の知恵を生かし体質に合わせた食材選びをすれば、生まれつきの体質を改善して病気をより上手に防ぐことができます。

https://www.whollyvet.com/wp-content/uploads/2019/03/Bird-grey-background.jpeg

“病気になったら病院へ”ではなく”積極的な健康管理でしっかり病気を予防する”へ。まずは毎日の食事を考えることから始めましょう。

予防だけじゃない 治療にも

不要物を含まず、滋養にあふれた手作り食は、体の負担を減らすことで自然治癒力を回復させることができ、現代医療が解決できていないギャップを埋めることができます。

疾患治療における自然食・手作り食の役割とは
  1. 動物に本来備わっている治癒力や免疫力を高める
  2. 病気を起こしやすくしている体質を改善する
  3. 疾患の原因でもあり結果でもある炎症や酸化過程を軽減する
  4. 治療薬の副作用を抑制する
  5. 入院・手術などの身体的・精神的ストレスの影響を軽減する
  6. 動物の幸福度を向上する

手術や薬、漢方薬などと併用することで、食事はこれらの機序を介して疾患からの回復と再発予防に役立っています。

手作り食は面倒?

毎日忙しいのに、ペットの食事なんて作る時間がない!と思っていませんか?

大丈夫、大変なのは最初だけ。慣れれば5分もかからずに作れるようになります。作り置きもできますし、自分たちの食事を作りながら同じ材料を使ってペットの食事を準備することもできます。

手作り食クイックスタートガイド 参考 作り置きレシピ獣医師監修レシピ集 参考 家族みんなで食べるごはん獣医師監修レシピ集

毎日少しの手間と時間で医者いらずになるのであれば、長い目で見て時間もお金も大きく節約できます。臭い耳や肛門嚢、治らない皮膚病と毎日格闘する時間があったらぜひ手作り食を。

愛犬や愛猫が自分の作ったご飯を大喜びで食べて日に日に健康になっていくのを見れば、少しの手間や時間なんて惜しくなくなるでしょう。

犬のゴールデンレシピ作ってみよう犬のごはん猫の手作り食バランス作ってみよう猫のごはん
  1. Kirkness EF et al. The dog genome: survey sequencing and comparative analysis. Science 301, 1898-1903 (2003).
  2. Lindblad-Toh K et al. Genome sequence, comparative analysis and haplotype structure of the domestic dog. Nature 438, 803-819 (2005).
  3. Pontius JU et al. Initial sequence and comparative analysis of the cat genome. Genome Res. 17, 1675-89 (2007).
  4. Swanson KS. Nutrient-gene interactions and their role in complex diseases in dogs. J Am Vet Med Assoc. 228, 1513-1520 (2006).