獣医師による手作り食・自然療法ガイド

1. 原因物質を避ける

原因の食物がわかっている場合

原因の食物を与えない

原因を取り除けば、1日〜数週間で症状がなくなります。重症なほど時間がかかります。

ポイント

食事だけではなく、おやつやサプリメント、予防薬などに使われている添加物などもチェックしましょう。例えば、鶏肉アレルギーで鶏肉をやめたのに、チュアブルタイプの予防薬に使われていた鶏肉エキスに気づかず症状がいつまでも消えないというようなことがよくあります。

原因の食物がわからない場合

  1. 今まで与えていた食事・ペットフード・おやつの原材料や成分をすべて書き出す。
  2. 与えたことのない食物を与える。
  3. 今まで与えていた食事がわからない場合は、犬猫でアレルギーを起こしやすい食物を除いてみる。
  4. 数週間様子をみる。
犬猫でアレルギーを起こしやすい食べ物ランキング
注意

嘔吐や下痢、軟便が主症状の場合は、まずは血液検査で他の消化器疾患や内臓疾患、内分泌系疾患がないか確認しましょう。診断に困った獣医師が”アレルギー体質”のせいだというのを信じて症状を悪化させるケースが増えています。

症状がなくなった場合

やめた食物のどれかが原因です。

  • 中止した食物を2〜3週間おきに1つずつ足していく
  • 再発したらそれが原因
  • アレルギー症状はすぐにでる場合も数日経たないと出ない場合もあるので、新しい食物を1つ足したら最低2週間は様子をみる。

症状は軽くなったけれど6〜8週間経っても完全に消えない場合

他のアレルギーや疾患が併発している可能性があります。

  • 現在与えている食事をもう一度見直す(前に気づかずに与えていた場合もよくある)
  • 複数の食べ物にアレルギーを起こしている可能性がある
  • 環境アレルギー(アトピー)やノミの対策も行う
  • 他に基礎疾患がないか動物病院で検査してもらう

2〜3週間経っても全く改善しない場合

食物アレルギーではない可能性があります。

  • 環境アレルギー(アトピー)やノミの対策も行う
  • 他に基礎疾患がないか動物病院で検査してもらう
  • 現在食べている食物を以前に知らずに与えていて、それにアレルギーを示している可能性もある
こんなことにも注意!
  • 全成分がはっきりと書かれていないペットフードや食品の使用は避けましょう。例えば「肉類」「動物性油脂」と書かれている場合は、どの動物由来かわからないため、アレルギー原因物質を特定することも避けることもできません。
  • ペットフードやペット用のおやつは同じ製造ラインを使って複数の製品を作っていることが多いため、原材料リストに掲載されていないアレルゲンが混入していることが非常に多いです。例えば、原材料にラム肉しか書かれていなくても、鶏肉や豆類など他のアレルゲンが混入していることがよくあります。食物アレルギーの治療中にペットフードやペット用おやつを使用する場合は、食物アレルギー専用の製品を使うようにしましょう。
  • ドライフードにはダニ(貯蔵庫ダニ)の卵が混入していることが多く、開封後に孵化して犬猫にアトピーや炎症性腸炎などのアレルギー反応を起こすことが知られています。
  • チュアブルタイプの治療薬や予防薬、ペット用サプリメントには牛肉や鶏肉エキス、ポークエキス、酵母がよく使用されています。きちんと確認しましょう。
  • サプリメントのカプセルに使われているゼラチンやカサ増しに使われている米粉、乳製品などにも注意が必要です。
  • 治療中は免疫系を刺激しないようワクチンの接種をできるだけ控えましょう。

アレルギー検査について

今まで血清抗体(IgE)検査や皮内検査など、様々な方法でアレルギー検査が行われてきましたが、偽陽性や偽陰性結果が非常に多いため、食物アレルギーの確定診断には上記のように疑われる食材を避ける除去食試験を行うのが一番確実な方法です[1]。

現段階でもっとも信頼性の高い検査はアメリカで開発された唾液抗体検査(IgA・IgM)です。犬猫でアレルギーが起こりやすい24種類の食物の検査を行うことができ、当サイトの獣医師も利用していますが、臨床症状や食事履歴と照らし合わせて解釈することで、食物アレルギーの診断がより早く確実に行えるようになりました。複数の食物に反応を示したり、食事履歴がわからない複雑なケースにもおすすめです。

アメリカ国外の飼い主の方もオンラインで申し込むことができます。ただし、申し込み、検体の送付、検査結果はすべて英語になりますのでご注意ください。

Nutriscanサイトへ

日本国内で行える検査で比較的信頼性が高いのがリンパ球反応試験です。

MEMO
唾液検査もリンパ球検査も100%確実ではないため、確定診断にはやはり除去食試験を行う必要があります。また、すべての食物を網羅しているわけではないため、検査項目以外の食物にもアレルギーを起こす可能性があることを忘れないようにしましょう。
  1. Muller and Olivry (2018) Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (4): can we diagnose adverse food reactions in dogs and cats with in vivo or in vitro tests? BMC Veterinary Research (2017) 13:275.
Step 1
原因物質を避ける

まずは原因物質との接触をできる限り減らしましょう。

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Step 2
食事療法

食事やサプリメント、ハーブの力でアレルギーを起こしにくい体を作ります。

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Step 3
漢方薬

症状が重く、ステップ1と2の効果を待っていられない場合には、漢方薬の力を借りることができます。

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Step 4
腸を修復

免疫系全体の70〜80%を担う腸を正常化して再発の防止に役立てましょう。

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番外編
ステロイドや抗生物質はいつ使う?

必要な時には怖がらずに使用。上手に使えば副作用も少なく、長期使用する必要もありません。

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その他
その他の治療方法

アレルギーの治療には他の方法も使用されています。

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