獣医師による手作り食・自然療法ガイド

2. 食事療法

食事療法の基本

食事やサプリメントでアレルギーを起こしにくい体を作ります。環境アレルギー(アトピー)では、食物アレルギーが併発していることが多いため、基本的には食物アレルギーと同じ食事療法を行います。

ポイント1
蛋白質源1種類 + 炭水化物源1種類 + 野菜・果物2〜3種類が基本

手作り食でもペットフードでもなるべくシンプルなメニューにするのがポイントです。

  • 2〜3週間おきに食材を変えてローテーション(手作り食のみ)
  • おやつは禁止。または食事と同じ材料を使用する。
  • 内臓肉・骨は主食と同じ種類にする(例:鶏肉が主食の場合は鶏レバーや鶏骨を使用)。

  • タンパク質:肉・魚・内臓肉。50%〜
  • 炭水化物:さつまいも、キビなど。0〜25%(与えなくてもよい)
  • 野菜・果物:緑黄色野菜など。25〜50%

  • タンパク質:肉・魚・内臓肉。80〜90%
  • 炭水化物:さつまいも、キビなど。0〜10%(与えなくてもよい)
  • 野菜・果物:緑黄色野菜など。0〜10%
MEMO
アレルギーの原因が食事ではなく環境アレルゲンだけだと確実にわかっている場合はこのステップを省略できます。

これから手作り食を始める方はこちらから

ポイント2
アレルギーを起こしやすくする成分を避ける
  • グルテンを含む穀物(小麦、大麦、オーツ麦など)
  • 遺伝子組み換え食品
  • 保存料・増粘剤(ペットフードに含まれる)
  • レクチンを含む食材 (穀類、豆類、ナス科植物など)

これらの物質はアレルギーの原因ではありませんが、腸管や免疫系にダメージを与えることでアレルギーを起こしやすくしています。

ポイント3
手作り食の場合は必要なビタミンやミネラルが足りているか再確認

忘れられがちな基本のビタミンやミネラルも抗酸化や抗炎症、免疫機能に役立っています。アレルギーの食事療法では食材の種類を限定することが役に立つ代わりに、ビタミンやミネラルが不足しやすくなります。自然食材を用いることにはこだわらず、マルチビタミン・ミネラル剤を積極的に用いるようにしましょう。

必要なビタミンやミネラルの量をチェックする

症状別 おすすめの薬膳食材

「寒熱」と「潤い」のバランスをチェックして食材を選びましょう。

まずは症状をチェック

寒の症状

  • 寒がりである
  • 日の当たる場所を好む
  • 寒い日に元気がなくなる・症状が重くなる
  • 病変部や手足の先が冷たい
  • 怖がり・物音に敏感

熱の症状

  • 暑がりである
  • 涼しいところを好む
  • パンティング
  • 病変部が赤く熱をもっている
  • 暑い日に元気がなくなる・症状が重くなる
  • 短気・攻撃的・不安症
  • 夢をよく見る

乾燥症状

  • 皮膚が乾燥・カサカサ
  • 被毛がパサついている
  • 粉のようなフケ
  • 若白髪が多い
  • 脱毛
  • ウンチが硬く水分が少ない
  • 舌が乾いている

湿潤症状

  • 病変部がジュクジュク
  • 皮膚が脂っぽい
  • 耳や皮膚が臭い
  • 唾液が多い
  • 大きいフケがでる
  • ウンチがゆるい・粘液が付いていることがある
  • 吐いたものが粘っこい
  • 肛門線が詰まりやすい
  • いびきをかく

ねこ

最初は「湿潤 + 寒」→ 後期「湿潤 + 熱」で進行するパターンが多いニャ

「乾燥タイプ」と「湿潤タイプ」に分かれるけど、どっちも「寒」→ 「熱」に進行するタイプが多いんだ

いぬ

おすすめ食材

一番症状が多かったタイプ別に食材を選びましょう。

  • タンパク質食品:ラム肉、ヤギ肉、ベニソン、カンガルー、鶏肉、レバー、サーモン、あじ、まぐろ、ぶり、いか、たこ、ほたて
  • 炭水化物食品:キノア 、米、さつまいも、かぼちゃ
  • 野菜・果物:ほうれん草、クレソンなどの緑色葉物野菜、アーティチョーク、アスパラガス、しいたけ、りんご、あんず、いちじく
  • タンパク質食品:鶏肉、七面鳥、ラム肉、ヤギ肉、ベニソン、カンガルー、サーモン、あじ、たら、ます、うなぎ
  • 炭水化物食品:キノア、バスマティライス(インディカ米)、かぼちゃ、里芋
  • 野菜・果物:うど、ブロッコリー、きのこ、アルファルファ、春菊、ラディッシュ、パパイヤ

精製された炭水化物、でんぷん質の多い野菜は控えめに。

  • タンパク質食品:豚肉、鴨肉、牛肉、レバー、いか、たこ、ほたて、牡蠣
  • 炭水化物食品:そば、ミレット(きび、あわ)
  • 野菜・果物:ほうれん草、クレソンなどの緑色葉物野菜、アスパラガス、セロリ、大根、レタス、白菜、アルファルファ、アーティチョーク、しいたけ、かぶ、れんこん、りんご、あんず、いちじく、ブルーベリー、マンゴー、メロン、いちご、すいか、梨
  • タンパク質食品:七面鳥、馬肉、鶏肉、すずき、かつお、さば、いわし、あさり、はまぐり、かに
  • 炭水化物食品:玄米、ミレット(きび、あわ)
  • 野菜・果物:セロリ、白菜、春菊、チンゲン菜 、小松菜、とうがん、大根、ごぼう、ラディッシュ、舞茸、かぶ、たけのこ、レタス、すいか、ブルーベリー、クランベリー、りんごの皮

豚肉などの脂の多い肉、乳製品は避ける。精製された炭水化物やでんぷん質の多い野菜はなるべく少なくする。

  • タンパク質食品:卵、鶏肉、鴨肉、サーモン(天然)、いわし・あじ・さんまなどの抗炎症効果が高い青魚
  • 炭水化物食品:さつまいも、長芋、里芋
  • 野菜・果物:ブロッコリー、にんじん、カリフラワー、キャベツ、しいたけ、緑色葉物野菜、ブルーベリー

サプリメント・ハーブ

必ず与えましょう

必須ビタミン・ミネラルの量をチェック

手作り食の場合は、必要なミネラルやビタミンが足りているかもう一度チェックしましょう。何らかの栄養素が不足している場合が非常に多いです。

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その他

  • ビタミンC:10〜20 mg/kg・1日3回
  • プロバイオティクス(乳酸菌):毎日
  • パルミトイルエタノールアミド(PEA):卵に含まれる成分で、成分で、猫のアレルギー性皮膚炎を緩和。サプリメントで与える場合は15 mg/kgを1日1回。

治療に役立つサプリ・ハーブ

アレルギーを抑制することが報告されている食材・サプリ

  • ケルセチンなどのフラボノイド:アレルギーによる炎症を抑える。パセリ、りんご、セージ、ブルーベリー、ビルベリーなどの野菜、果実に含まれる。
  • 鶏卵:パルミトイルエタノールアミド(PEA)を含む。卵アレルギーの場合は与えないこと。

免疫を調整する作用があるサプリ

  • コロストラム(牛の初乳・免疫ミルク):牛乳アレルギーの場合は与えないこと。使用説明書に従って与える。
  • キノコエキス:マイタケ、しいたけ、霊芝、コルディセプスなどを含むもの。使用説明書に従って与える。

ネトル

  • かゆみを抑制
  • 免疫系を調整:マクロファージを活性化することにより、アレルギー原因物質の体内からの除去に役立つ
  • 熱症状(上記を参照)がある場合に特に効果がある
  • 副作用:くしゃみ、流涙がみられることがある。他のハーブや漢方と併用する場合は、専門家に確認を行う。妊娠中、非ステロイド系消炎剤(NSAID)使用中には使わない。
  • 乾燥ハーブよりエキスの方が効果が高い。体重 5 kgあたり0.2〜0.5 mL。1日3〜4回。

ココナッツオイル

皮膚の二次感染を防ぐ。天然の抗菌効果があるラウリン酸を多く含む。お腹がゆるくなる犬猫が多いため、ごく少量から初めて少しずつ量を増やす。体重5 kgあたり小さじ1程度。オメガ3脂肪酸オメガ6脂肪酸をきちんと与えている場合は、無理して与えず、外用や薬浴剤として利用する。

 

Step 1
原因物質を避ける

まずは原因物質との接触をできる限り減らしましょう。

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Step 2
食事療法

食事やサプリメント、ハーブの力でアレルギーを起こしにくい体を作ります。

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Step 3
漢方薬

症状が重く、ステップ1と2の効果を待っていられない場合には、漢方薬の力を借りることができます。

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Step 4
腸を修復

免疫系全体の70〜80%を担う腸を正常化して再発の防止に役立てましょう。

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番外編
ステロイドや抗生物質はいつ使う?

必要な時には怖がらずに使用。上手に使えば副作用も少なく、長期使用する必要もありません。

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その他
その他の治療方法

アレルギーの治療には他の方法も使用されています。

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