獣医師による手作り食・自然療法ガイド

統合医療ってなに?

統合医療とは、近代西洋医学を中心とし、これに漢方薬、西洋ハーブ、鍼灸、薬膳などの伝統医学やマッサージ、アロマテラピーなどの民間療法といった安全性と有効性についてのエビデンスが得られている様々な方法を組み合わせることにより、健康を維持し、病気の予防・治療効果を上げ、患者の生活の質(QOL)を向上させることを目的とした医療のことです。

近代医学が主に「疾病」を治す「対症療法」であるのに対し、伝統医学は病気の原因になった患者自身の全体のバランスや体質、置かれている環境を治していく「原因療法」といえます。

統合医療では、この2つを組み合わせて一頭一頭の犬や猫に最も適したオーダーメイドの医療を提供することを目的としています。

例えば、皮膚病の場合、かゆみ、赤み、湿疹、二次感染といった症状は、経験のある獣医ならお決まりの内服薬や外用薬で上手に抑えることができます。

でもそれだけではなく、そもそもの皮膚病になりやすい体質や環境を同時に改善していけば、治療だけではなく、再発の予防にもつながるのです。

患者の心身の全体のバランスを整えることは、健康の増進、ひいては他の疾患の予防にも役立つため、患者自身だけではなく、愛猫・愛犬の健康と長寿を願う飼い主にとっても大きな安らぎとなるでしょう。

この「体質」の診断と改善に特に向いているのが漢方医学を始めとする自然医学です。日本の獣医領域では統合医療はまだあまり知られていませんが、海外ではすでに多くの大学や総合病院で統合医療科が設けられており、現代医学と伝統医学の専門医による共同医療(チーム医療)が行われています。

統合医療にできること

健康の維持や病気の治療に大きな役割を果たしているのに、現代医学では取り組むことができない生理学的プロセスはたくさんあります。統合医療は、漢方薬やハーブ、鍼灸、薬膳、理学療法などを取り入れることで、このギャップを埋めることができます。

  • 気になる臓器や組織への血流を促進し、細胞の老化や組織の変性を予防、再生を促す
  • 急性炎症では、必要な部位で抗炎症効果を発揮し、全身へ作用を起こさない
  • 慢性炎症では、血管内皮障害を抑制して炎症を鎮静化
  • 現代の犬猫に多い慢性疾患の原因である亜臨床性のインスリン抵抗性を緩和
  • 薬剤耐性菌を引き起こす抗生物質に代わる新たな抗菌剤を提供
  • 自己免疫などの異常な免疫は抑え、体に必要な本来の免疫力を高める
  • 癌細胞を殺すのではなく、分化を促し、血管新生を抑制することでがん治療を助ける
  • 身体的・精神的なストレスに負けない強い体を作る
  • 生理機能が亢進しやすく有害物がたまりやすいタイプでは解毒を助け、逆に生理機能が低下して生理活性物質が不足しやすくなるタイプでは機能を助けることで自然治癒力を高める

統合医療にできないこと

  • 奇跡を起こすこと

現代医療と同じように、統合医療や自然医療は「奇跡」ではありません。犬や猫の体質を見極め、科学的・生理学的な病気の仕組みを理解した上で、現代医学による方法では対処できていないギャップを見つけ、最適な方法を選択することで効果を発揮します。これには経験とエビデンスに基づく確かな判断力が必要とされます。

確かに、現代医学的な治療でずっと治らなかったものが、自然医療によって劇的な改善を示すこともあります。でもそれは奇跡ではなく、ギャップにピタリと合う方法だったからに過ぎません。

高すぎる効果を謳った高価な製品や民間療法には惑わされず、皆さんの愛犬や愛猫を「他にはないユニークな存在」として理解してくれる獣医さんを探しましょう。それが愛犬や愛猫の健康を守る第一歩です。