獣医師による手作り食・自然療法ガイド

犬猫に毒性を示す植物

犬や猫で毒性を示すことがわかっている主な植物です。

 

名称   説明
アサガオの種子 リゼルグ酸、コンボルブリンなど、複数の毒性のある化合物を含む。人では下剤として使われていた生薬。犬猫では、嘔吐、下痢、大量摂取で神経症状を起こす。
アヤメ属植物
主に球根にイリジン、イリゲニンなどの毒素が含まれる。流涎、嘔吐、脱力、下痢などの症状を起こす。犬や猫が掘り返せないところに植えること。
アンスリウム カラー
シンゴニウム
スベリヒユ
スパティフィラム
ディフェンバキア
フカノキ
フィロデンドロン
ブラッサイア
ベゴニア ポトス
モンステラ
人気の観葉植物。シュウ酸カルシウム結晶や酵素分解酵素を含み、皮膚や粘膜に炎症を起こす。軽度の中毒で流涎、口唇部の腫脹、嚥下障害、リッキング、重度の中毒で嘔吐、腹痛、下痢、出血性腸炎、呼吸障害などが起こる。犬猫がかじれない場所で栽培すること。里芋の葉でも同じ症状が起こる。
イヌサフラン 細胞分裂を阻害するコルヒチンを含む。嘔吐、下痢、ショック、多臓器不全、骨髄抑制などを起こす。
イヌハッカ
キャットニップ
キャットミント
猫のみ 猫は犬ハッカにマタタビと同じ様な反応を示すが、嘔吐や下痢を起こすことがある。
イヌホオズキ サポニン、ソラニン、アトロピン様物質を含む。流涎、食欲不振、嘔吐、下痢、中枢抑制、異常行動、脱力、散瞳、徐脈などを起こす。
キョウチクトウ
オレアンダー
ジギタリスと同じく、強心配糖体を含む。乾燥した葉を体重の0.005%程度摂取しただけで致死的といわれる。ジギタリス中毒と同じ治療を行う。同じキョウチクトウ科のニチニチソウには、抗がん剤として使われているビンクリスチンやビンブラスチンなどのビンカアルカロイドが含まれる。
コンフリー
ヒレハリソウ
ハーブティーとして流行していた時期があったが、肝障害を起こすことがわかり販売が禁止されるようになった。観賞用、牧草用として栽培していたものが野生化していることがある。外用では創傷治癒を促進。
ジギタリス 1700年代に抽出物が強心剤として初めて使用され、現代医学の礎ともいわれる植物。花、葉、種子すべての部位に強心配糖体が含まれ、不整脈を起こす。観賞用として栽培されているものは毒性が低くなっているが注意は必要。急性で重度の中毒には抗ジゴキシン抗体の投与が必要。
スイートピー
レンリソウ
アミノプロピオニトリルという神経毒が主に豆やサヤに含まれる。脱力、起立不能、うろつき回る、ふるえ、けいれんといった症状を起こし、死に至ることもある。
スズラン コンバラトキシン、コンバラマリンなどの強心配糖体を含み、嘔吐、不整脈、低血圧、けいれんなどを起こす。
ソテツ 九州南部から沖縄地方に自生。主に種子に含まれるサイカシン配糖体が体内で肝毒性・発がん性がある物質に変化する。また、非たんぱく性アミノ酸成分が脳神経線維を破壊し、神経症状を起こすと考えられている。摂取後15分〜3日で嘔吐、中枢抑制、下痢、食欲廃絶、神経症状、出血、肝酵素の上昇を起こす。猫より犬で中毒が起こりやすい。
大麻
カンナビス・サティバ
マリファナ
向精神作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)を含む麻薬。葉、茎、花、芽のいずれの部位でも「カンナビノイドの四徴」と呼ばれる低体温、自発運動の低下、痛みの知覚の低下、カタレプシーが生じる。中毒は猫よりも犬で多く報告されている。繊維利用のために品種改良したものをヘンプ(麻)と呼ぶが、ヘンプはTHC濃度が低く毒性はほとんどないため、種子油やCBDオイルの原料に使われている。漢方薬に使用される麻子仁は大麻ではなくヘンプの種子。
タバコ ニコチン中毒を起こす。一過性の興奮状態ののち、元気消失、嘔吐、運動失調、麻痺が生じる。生の植物より煙草の方が毒性が強く、死亡事故も報告されている。
ツツジ科植物
ツツジ
アセビ
アザレアなど
葉、茎、花、蜜などに含まれるグラヤノトキシンという毒素がナトリウムチャンネルに結合して、持続的な神経脱分極を起こす。摂取直後は嘔吐、下痢、腹痛が現れるが、これは毒素ではなくタンニン、フェノール配糖体などに対する反応と考えられている。2〜6時間後に発声、中枢抑制、脱力、呼吸困難、低血圧などの症状が現れる。
毒きのこ 嘔吐、下痢、神経症状、不整脈、肝障害など野生のキノコにはさまざまな毒性を持つものがある。人と同じ注意が必要。
ドクゼリ トリカブト、ドクウツギとともに三代有毒植物と呼ばれ、日本に広く自生。シクトキシン等の猛毒により下痢、痙攣、重度の腹部痛、散瞳、発熱、腹部膨満、呼吸不全を起こして死に至る。
ドクニンジン
毒パセリ
ドクゼリと同じセリ科の植物。さまざまな有毒アルカロイドを含む。人がシャクやパセリと間違えて食べ食中毒を起こすことがある。犬や猫にも注意が必要。
トリカブト 花、茎、葉、根、花粉、蜜すべてにアコニチン等の猛毒を含む。漢方生薬の附子は、トリカブトの根を加工したもの。現代では、弱毒処理がされているものしか使われていない。
トマト 葉や茎、青い実にトマチンというソラニンに似た毒性成分を含む。流涎、食欲不振、激しい嘔吐、散瞳、徐脈などの症状を起こす。
ナンテン シアン生成配糖体を含む。多量摂取で脱力、運動失調、けいれん、昏睡、呼吸不全などが起こる。
ヒガンバナ亜科植物
チューリップ

アマリリス、ヒガンバナ、水仙、ヒアシンス、チューリップなどの球根や他の部位には、リコリンやチューリパリンという嘔吐を刺激する物質が含まれる。流涎、嘔吐、下痢などの症状を起こす。
ヤドリギ
セイヨウヤドリギ
オウシュウヤドリギ
アメリカヤドリギ
基礎研究においてオウシュウヤドリギ(Viscum album)の抽出物が腫瘍細胞を死滅させ、免疫系を活性化することが示されたことから、人のがん治療で臨床試験が行われたが、明らかな効果のエビデンスは得られていない。生で未加工の植物は毒素を含み、血圧の変動、徐脈、蠕動運動の亢進等の症状を起こす。
ヤナギトウワタ
ミルクウィード
Pleurisy root
根が胸膜炎(Pleurisy)の疼痛緩和や呼吸補助に利用されていた。強心配糖体や神経毒を含む。
ユリ属
ワスレグサ属
猫のみテッポウユリ、オニユリ、カノコユリ、ニッコウキスゲ、ワスレグサなど。花、葉、茎などを摂取すると直後に流涎や嘔吐が起こり、いったんはおさまるが、1〜3日後に無尿または乏尿、食欲廃絶、中枢抑制、低体温、腹部痛などを症状とする急性腎不全を起こす。
ヨウシュヤマゴボウ
ポークウィード
インクベリー
根、葉、果実、種子すべてに毒性物質を含み、激しい腹痛、嘔吐、下痢、呼吸困難などを起こす。ネイティブアメリカンはリウマチや関節炎の緩和、催吐剤として利用していた。
リシン
アブリン
トウゴマ、トウアズキに含まれる猛毒。1粒で激しい消化器症状を起こす。
ウルシにかぶれるのは人間だけです。

そのほかに中毒が報告されている植物

アジサイ、アデニウム、イヌマキ、イングリッシュアイビー(セイヨウキヅタ)、オランダシャクヤク、オレガノ、カスミソウ、カタバミ(オキザリス)、カーネーション、カランコエ、キンポウゲ、クチナシ、クレソン、クレマチス、ケシ、ゴクラクチョウカ、シクラメン、スイバ(ソレル)、スベリヒユ、センダン、ダリア、ツゲ、デイジー、デルフィニウム、トキワツユクサ、ドラセナ、ナデシコ、ネズミモチ、ハナキリン、ヒイラギ、フジ、プリムローズ、ポインセチア、ホップ、ポドフィルム、マジョラム、ヤロウ(セイヨウノコギリソウ)、ユッカ、ルリジサ(ボラージ)、レースフラワー(ドクゼリモドキ)など多数。

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