獣医師による手作り食・自然療法ガイド

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の食事療法

クッシング予備群およびクッシング症候群に共通する特徴はインスリン抵抗性。過剰産生されるコルチゾールが肝臓による糖の生成(糖新生)を促進し、血糖値を上昇させます。これに対し、体はインスリンというホルモンを膵臓から分泌して、血糖値を下げようとしますが、コルチゾールはインスリンの作用も阻害。体がインスリンに反応しなくなるインスリン抵抗性という状態を引き起こします。

さらに皮下脂肪が内臓周囲に移動して、レプチンというホルモンを産生し、インスリン抵抗性を加速させます。

クッシング症候群では、糖尿病ほど大きく血糖値があがることはないため、高血糖による症状や尿糖がでることはまれです。でも、水面下では血管を裏打ちする細胞を障害して、分子レベルの炎症を起こし続けています。食事療法と自然療法はこのインスリン抵抗性と炎症の緩和に大きく役に立ちますが、特に重要なのが食事療法です。ハーブや漢方薬は食事療法の効果を加速させる補助的な方法と考えるといいでしょう。

犬猫本来の食性にあった低糖食を

もともと犬と猫は獲物の肉や内臓、骨を主食にし、ときどき卵や木の実などを食べる生活を送っていました。米、小麦、とうもろこしなどの穀類を食べるようになったのはつい最近。人に飼われ、ペットフードが普及するようになってからです。このような食生活の変化がクッシング症候群を始めとする生活習慣病の増加の引き金になっています。

犬猫の食生活に合った食事に切り替えて、疲れた消化器官を休ませ、本来の力を取り戻してもらいましょう。

インスリン抵抗性を改善する食事とは

低炭水化物・低糖食

肉・魚を主食とし、ビタミン・ミネラル源として少量の内臓肉に抗酸化・抗炎症作用のある新鮮な野菜果物を組み合わせた手作り食に切り替えましょう。

ごはん、パン、パスタ、トウモロコシなど、食後に血糖値をあげてインスリンの分泌を促す炭水化物食品はNG。じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ、バナナ、マンゴーなど、糖分の多い野菜や果物も控えてください。

内臓脂肪を予防するカリウムが豊富なパセリを加えてね

犬猫本来の食生活にあった手作り食の作り方はこちらで確認することができます。

手作り食クイックスタートガイド

インスリン抵抗性を促進するレクチンを除去した食事なら、さらに効果的です。

レクチン除去食:あらゆる病気の治療になるか

加熱食よりも生食を

食後の血糖値とインスリンの上昇を抑えるもう一つの方法は、ゆっくりと食事を消化吸収させることです。精製加工されているドライフードや缶詰フードはもちろんNG。手作り食では、加熱調理食より生食の方が反応もよく、良好な状態を長く維持できます。フードプロセッサーで必要以上に細かくしたり、ペーストにするのも避けましょう。

おすすめの優先順位
  1. 手作り生食
  2. 市販の生食
  3. 手作り加熱調理食
  4. 炭水化物・豆類を使っていない市販のフリーズドライ・エアドライ・レトルト食に新鮮な野菜や果物をトッピング。素材をそのまま生かした製品を選ぶようにしましょう。

生食を与える際の注意点はこちらで確認してください。

生ものを与える際の注意点

温かい食事で全身を活性化

クッシング症候群では、肥満歴があり、体熱が均等に分散していない子がよくいます。温かい食事で、全身循環のバランスを改善し、基礎代謝力をあげて太りにくい体を作りましょう。

食事の温度は体温程度が最適。暑がりの子は室温を目安に。

食事以外にもできること

インスリン抵抗性を改善するためには、運動と睡眠の質も大切です。遊びや運動でしっかりと筋肉を使い、筋肉量を増やすことでカロリーを消費しやすい体になります。ぐっすり眠れる環境を作ってあげるのも大切です。例えば、犬では1日睡眠不足になっただけでインスリン抵抗性を起こすことが研究で明らかになっています。

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