獣医師による手作り食・自然療法ガイド

犬猫の健康を守るためにできる5つのこと

私たちのサイトでは愛犬や愛猫の健康を守るための食事や健康管理方法についてなるべく詳しい解説を心がけています。これは皆さんに実際にお会いしてわんちゃんや猫ちゃんの状態を確認することができないため。初めてペットを飼う方から、ベテランの愛犬家・愛猫家、自然療法に興味のある獣医師まで幅広いレベルの方を対象に、よくある一般的な状況だけでなく、一頭一頭のさまざまな状態に合わせたシナリオを想定して記事を作成しています。

でも、どんなに複雑な問題でも突き詰めて考えていくと行き着くのはごくシンプルで簡単なこと。今回は犬猫の健康を守るために本当に伝えたい大切なことだけを書きたいと思います。

幸せで病気になりにくい犬猫を育てる5つの習慣とは

1. 新鮮で温かい食事

本物の食べ物を使った食事には、犬猫の健康を守る新鮮な栄養素や抗炎症・抗酸化などの薬理作用がある成分がたっぷり含まれています。どんなに高価で計算しつくされたペットフードもサプリメントも本物の食品の新鮮さや成分の豊富さにはかないません。どんな食材を使うかとか、一つ一つの栄養素が足りているかとか、生食にするか加熱食にするかとか、そんな細かいハナシは後回しでOK。まずは実践あるのみです。

例えばレタスのような水分しかなさそうな食材でも79種類もの生理活性物質が見つかっています(米国農務省データベースより)。

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2. 適度な運動

適度な運動は犬猫の寿命と大きな関わりがあります。肥満やメタボを予防するだけでなく、心臓や肺の機能を強化し、いつまでも元気に暮らすための体を作ります。体を自分の力で動かすことは、全身を温めて新陳代謝を促し、酸素や栄養素をさまざまな臓器に届けると同時に老廃物や有害物質を運び去るのにも役に立ちます。筋肉は第2の心臓(ポンプ)ともいわれ、適度な筋肉がついていれば血液やリンパがよどんでむくむこともありません。

また、歳をとって病気になったときに適度に筋肉がついている犬猫は内臓などの体の大切な構造がどんどん消耗していく「悪液質」という状態に陥りにくく、治療への反応性も生存率も高くなっています。

3. 毎日のブラッシング

ブラッシングも体のすみずみまで血液やリンパの流れを促すことができます。皮膚呼吸を妨げる体表の汚れや毛玉を取り除いて皮膚病を予防することができますし、体表にたくさん分布し脳神経につながっている感覚器を通して”気持ちいいい”シグナルを脳に届け、幸せホルモンの分泌を促します。

1日1回、ブラッシングをしながら全身をチェックする習慣をつけると、シコリやできもの、爪や肉球の状態、耳や肛門周りの臭い、目の色などの異変、痛みの有無にもすぐに気づくことができます。毎日ブラッシングをしている犬猫は、体のあちこちを触られることに慣れているため、病院でも在宅でも治療が非常にスムーズに行えます。

短毛種の犬猫も例外ではありません。毛の状態や長さにあったブラシをトリマーさんに教えてもらいましょう。

4. 歯みがき

歯周病や歯垢、歯石は口の中だけの問題ではありません。全身の問題です。歯垢や歯石の中では細菌がいっぱい増殖しています。細菌や細菌が産生する毒素(LPS)は、免疫系を刺激し、免疫細胞はこれらを排除しようと攻撃を開始します。そのときに組織を溶かす酵素を分泌するため、歯茎が炎症を起こしたり出血するようになり、歯を支えている骨も徐々に溶けていきます。細菌やLPSは血管に入り込み全身に散らばって同じような反応をあちこちで引き起こします。免疫系への負担はもちろんのこと、特に心臓や腎臓、肝臓が影響を受けやすくなっています。

歯周病になりやすい品種(ダックスフンド、コリーなどの鼻が長い犬種、ヨーキー、チワワ、パグなどの短頭種、猫など)は1日2回、なりにくい子でも2日に1回は歯ブラシでブラッシングをしてあげましょう。

最近では歯科レントゲンが広まったことから、歯石や歯垢がまったくたまっていないように見える犬猫でも思ったより歯周病や骨の融解が進んでいる実態がみえてきました。口臭、よだれ、鼻水、逆くしゃみが気になるようになったら、歯がきれいな子でも歯周病を疑いましょう。

どうしても口を開けてくれない子は病院で定期検査を!

5. 愛情

誰になんといわれようと思う存分、注いであげてください。犬と猫にとっては飼い主さんだけが唯一の家族で友達です。犬・猫・人それぞれさまざまな愛情の形があり、ときには一定の距離を置くこと、しつけをきちんと行うことも必要ですが、健康面や精神面だけからいうと、犬猫が安心してぐっすり眠れる環境を作ること、スキンシップ、一緒に遊んだり運動することが一番のストレス発散になり、病気予防に役立ちます。

ぐっすりと眠っている間に積もった炎症やストレスホルモンをリセットすることができます。


これらの5つの習慣は当たり前のことのように聞こえますが、実は炎症ストレス血行障害という犬猫の病気の三大原因を全方向からしっかりとカバーしています。

血液検査や尿検査を年1回(シニア期に入ったら年2回)、命に関わる感染症を予防するのに最低限必要な予防薬の投与を行なっていればもう万全。

それでも出てくる不調や病気は、遺伝(品種・体質)、感染、加齢、事故、環境要因など飼い主さま自身がコントロールできない不可抗力によって起こるもの。専門家や獣医師の力を借りて対策を行いましょう。5つの習慣が身についているとすぐに異変に気づくことができるため、手遅れになる前に対策をとることができます。

犬と猫の体質診断