獣医師による手作り食・自然療法ガイド

肝臓の負担を減らす

肝臓は使い終わったホルモン、古い細胞、老廃物、薬物、毒物などが全身から集まって来る臓器です。食事で摂取した栄養素もまずは肝臓に運ばれ、作り変えられてから全身へと分配されていきます。

肝胆疾患の治療中は、肝臓の仕事量をなるべく減らすことが肝臓の治癒や再生、胆汁の流れの改善に役立ちます。

治療薬やサプリメントを見直す

かかりつけ医で現在投与中の治療薬を見直してもらい、本当に必要なものだけを使用するようにしましょう。抗生物質、抗真菌薬、消炎鎮痛薬(関節炎治療薬)、抗不安薬、高けいれん薬など、医薬品の多くは肝臓で代謝されます。

肝臓病の治療には、自己免疫性疾患や腫瘍などの理由がないかぎり、ステロイド(グルココルチコイド、コルチコステロイド、プレドニゾロン、デキサメタゾンなどとも呼ばれます)による治療はおすすめできません。一時的な症状の改善は見られるかもしれませんが、ほとんどは効果がなく、時間とともに副作用の方が大きくなります。

原因を解明しないうちにステロイドを勧められたら別の病院に転院を!

サプリメントについても肝臓を保護するものに切り替え、他のサプリメントは一時的に中止しましょう。


ワクチンと予防薬を一時中止する

治療中は、ワクチン、ノミ・マダニ予防薬、駆虫薬を中止しましょう。フィラリア予防薬は、季節や住んでいる地域での流行状況を確認し、感染する危険性が高い場合のみ投与を行います。

接種が義務付けられている狂犬病ワクチンについては、かかりつけ医で「狂犬病予防注射猶予証明書」を発行してもらい、役所に提出しましょう。

クリーナー・洗浄剤・精油

家の中の掃除に使うクリーナーや洗浄剤はできるだけ使用せず、水や酢、重曹を使うようにしましょう。精油も肝臓での代謝が必要なため、アロマディフューザーなどの使用は避けます。

精油が入っていない無香料のものや赤ちゃん・妊婦さんのいる家庭用の製品を選ぶのもおすすめです。


食事は少量ずつ数回に分けて

栄養素がいっぺんに肝臓に流れこまないよう、食事は少量ずつ、1日4〜6回に分けて与えるのがおすすめです。肝胆疾患では、食欲が低下したり、消化力が弱っていることも多く、少しずつ与えることで、消化器症状を抑え、必要なカロリーをきちんと与えることができます。

流動食にしたり、初期は脂質を控えめにするのも役に立ちます。


治療の初期はローフード(生食)ではなく、加熱食を

食物には細菌が付着しています。健康な犬猫では、胃酸や胆汁、腸管免疫系、肝臓によって殺菌され、病気を起こすことはありませんが、肝臓や胆嚢の疾患では、この機能が弱まり、食中毒を起こす危険性が高くなります。ローフードを与えている場合は、急性期や治療の初期は加熱食に切り替えて肝臓の負担を減らすようにしましょう。

症状や検査結果が落ち着いてきたら、少しずつ生食に戻すことができます。


浄水器を利用

水道水を与えている場合は、浄水器を使うか、白湯(湯冷まし)に切り替えましょう。水道水には殺菌に使われた化学物質が残っています。残留物質の一部は、数分間煮沸するだけでも減らすことができます。


急性期は絶食

犬猫の肝臓病・胆管疾患は、長い時間をかけて発生し、慢性化したものが多くなっていますが、毒素や感染、薬害などによって急性肝不全を起こしたり、慢性疾患に何らかの要因が加わることで急激に悪化したりすることがあります。このような場合は、無理に食事をさせないようにしましょう。病院で点滴治療を受けるのが一番ですが、在宅で治療を行う場合は、飲み水やボーンスープにビタミンB群ビタミンCを溶かして与え、脱水状態になるのを防ぎます。

病院での治療、漢方薬によって状態がおさまってきたら、肝臓の再生をサポートする食事療法を行います。


腸の健康を守る

腸粘膜は口から入ってくる細菌、毒素、アレルゲンなどを体内に入り込ませないための第一のバリア。でもこのバリアが壊れると、これらの物質が血管を通って肝臓に入り込みます。肝臓の負担を軽くするためにもグルテンやレクチンなどの腸のバリアを壊す成分が入った食材をなるべく減らすようにしましょう。

さまざまな病気を引き起こすグルテンさまざまな病気を引き起こすグルテン レクチン除去食:あらゆる病気の治療になるか