獣医師による手作り食・自然療法ガイド

ビタミンD

 カルシウム・リンの調節  免疫  心臓  インスリン分泌   細胞・組織の再生 

食事で摂取したカルシウムとリンを体内にきちんと吸収させる役割を果たしているほか、免疫系や心臓の機能、インスリン分泌、細胞や組織の再生などにも関与しています。

猫にはビタミンD3を

ビタミンDには、D3とD2の2種類があります。ビタミンD3は、動物由来の食品(魚油、魚、卵黄など)に含まれており、ビタミンD2は植物由来です。いずれも体内に吸収されたのち、肝臓と腎臓で活性化されてはじめてその役割を果たすことができるようになります。猫はビタミンD2を活性型に効率よく変えることができないため、動物由来の食品で補うようにしましょう

ビタミンD2 = エルゴカルシフェロール
ビタミンD3 = コレカルシフェロール
活性型ビタミンD = カルシトリオール

…とも呼ばれます。

犬は過剰摂取に注意

ビタミンDは、必要量をきちんと取りながら、過剰摂取にも気をつける必要があります。特に犬では上限値が低いので注意が必要です。過剰症は食品よりもサプリメントで起こりやすく、敏感な犬では上限値以下でも嘔吐などの症状を起こすことがあります。

肝油はビタミンAとDが一緒に摂れるので便利ですが、猫や小型犬には、なるべく用量の低いものを選びましょう。イワシなどの青魚や卵もおすすめです。

給与量の目安(1日分)

体重 5 kg 10 kg 15 kg 20 kg 25 kg
目安 1.3 µg
(50 IU)
2 µg
(84 IU)
3 µg
(120 IU)
3.6 µg
(140 IU)
4.3 µg
(170 IU)
上限 7.5 µg
(300 IU)
13 µg
(500 IU)
17 µg
(680 IU)
21 µg
(850 IU)
25 µg
(1000 IU)

体重 3 kg 4 kg 5 kg 6 kg 7 kg
目安 0.3 µg
(12 IU)
0.4 µg
(16 IU)
0.5 µg
(20 IU)
0.6 µg
(24 IU)
0.6 µg
(24 IU)
上限 36 µg
(1400 IU)
45 µg
(1700 IU)
53 µg
(2100 IU)
60 µg
(2400 IU)
68 µg
(2700 IU)

※1 IU = 0.025 µg。
※避妊去勢済み・普通の運動量の場合。給与量は、ライフステージ、運動量などによって変わります。こちらのページから正しい量を確認しましょう。

食品中のビタミンD(参考)

食品(100 g 中) ビタミンD
肝油(タラ) 10,000 IU(250 µg)
乾燥きくらげ 4,400 IU(110 µg)
しらす干し(半乾燥) 2,440 IU(61 µg)
まいわし(生)・紅鮭 1,280 IU(32 µg)
にしん 880 IU(22 µg)
あじ類・さんま 240〜640 IU(6〜16 µg)
大西洋鮭(養殖) 400 IU(10 µg)
さば類 200〜400 IU(5〜10 µg)
まいたけ(乾燥) 792 IU(19.8 µg)
干し椎茸 508 IU(12.7 µg)
卵黄(生) 236 IU(5.9 µg)

ビタミンD ➜ 食品換算

ビタミンDは肝臓や筋肉、脂肪に蓄えられるので、1〜2週間に1回、イワシやアジを主食にすればOK

ビタミンD単位換算機

食品中のビタミンDは「マイクログラム(µg)」で、サプリメントでは「IU」で表示されることが多くなっています。犬猫の栄養基準はNRCで「µg」、AAFCOとFEDIAFで「IU」が使われています。

1 IU = 0.025 µg

ビタミンD欠乏症と過剰症

ビタミンDが不足するとどうなるの?

カルシウムの吸収が抑制されるため、成犬・成猫では骨そしょう症が、子犬・子猫では骨の形成不全が起こります。また、免疫力の低下や低カルシウム血症に伴うさまざまな症状が現れます。

ビタミンDを与えすぎるとどうなるの?

軽度では流涎や嘔吐、便秘、軟便、食欲不振などの症状が現れます。長期の過剰摂取では高カルシウム血症による血管や腎臓などの臓器へのカルシウムの沈着が起こり、尿量の増加、体重低下といった症状が現れます。

ビタミンDを成分とした殺鼠剤やサプリメントの誤飲による急性毒性や死亡事故も報告されています。1日〜2日目から食欲不振、起立不能などの症状が現れます。

豆知識

日光浴は必要?

人では日光浴をすることで皮膚でビタミンD3(コレカルシフェロール)を合成することができますが、犬と猫ではこの能力が低くなっています。食事できちんとビタミンD3を補ってあげるようにしましょう。

といっても犬猫に日光浴が必要ないというわけではありません。日光浴には、体内時計の調節や体温調節、血行促進といった重要な役割があります。