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論文紹介 | 犬の免疫介在性ドライアイに対する抗炎症・抗酸化栄養素の効果

2016/9/30

犬の乾性角結膜炎(ドライアイ)の治療に抗炎症・抗酸化効果のある生薬を配合したドッグフードを併用し、有意な改善が見られたというイタリアからの報告をご紹介します。

論文情報

Destefanis et al. 「Clinical evaluation of a nutraceutical diet as an adjuvant to pharmacological treatment in dogs affected by Keratoconjunctivitis sicca」BMC Veterinary Research (2016) 12:214 DOI 10.1186/s12917-016-0841-2

論文リンク

著者はイタリアのペットフード会社「SANYpet」の開発部で、自社製品「FORZA10 イムーノアクティブ」というドッグフードを使用。

使用された
ペットフード

米・魚(ニシン)ベースで、次の天然成分を含有(量は体重あたり)。

  • メロン 4.96~5.4 mg/kg
  • ヒバマタ科海藻(Ascophyllum nodsum)660~720 mg/kg
  • ヘマトコッカス藻(アスタキサンチン源)0.81~0.88 mg/kg
  • レスベラトロール(イタドリ由来)0.116~0.126 mg/kg
  • アロエベラ 2.2~2.4 mg/kg
  • パパイア 2.2~2.4 mg/kg
  • ザクロ 1.16~1.26 mg/kg
  • チャノキ(茶) 1.16~1.26 mg/kg
  • ウコン(ターメリック)1.69~1.84 mg/kg
  • コショウ 0.47~0.54 mg/kg
  • 亜鉛(硫酸亜鉛一水和物)2.27~2.47 mg/kg
  • オメガ3・オメガ6脂肪酸(1 : 0.8)
試験方法

免疫介在性の乾性角結膜炎の診断を受けたさまざまな犬種の犬50頭(雌19頭・雄31頭・平均年齢6.5±0.7歳)を対照群(普通食)または被験群(上述のフード使用)に25頭ずつ無作為・雌雄均等に割り付け、60日間にわたり該当の食事の給与と点眼治療を実施。

普通食と被験食の成分分析値は上記の天然成分を除き、ほぼ同一。体重あたりのカロリー摂取量も群間で同等となるよう給与量表に従って1日2回給与。

組み入れ基準

  • 眼瞼けいれん、結膜の炎症、角膜の角化(混濁)、粘性眼漏の症状がある
  • STT-I値 < 10 mm/分

 除外基準

  • 全身性疾患、神経系疾患、外傷性または中毒性の角結膜炎
  • 試験で使用される栄養成分に対する不耐性やアレルギーがある
  • 神経学的な機序が疑われる乾性角結膜炎

 点眼治療:飼い主が自宅で実施。

  • 0.03% タクロリムス(塩化ベンザルコニウム・メチルセルロース溶液に溶解) 1日2回
  • 0.2% ヒアルロン酸 1日5回

眼科検査(0・15・30・60日目)

オキシブプロカイン局所麻酔下でフルオレセイン染色、スリットランプ検査、眼底検査、圧平眼圧測定、両目の写真撮影を実施。以下の項目をスコア評価(すべて点数が高いほど重症)。

  • 角膜色素沈着(0~3点)
  • 角膜角化(0~2点)
  • 結膜炎症(0~3点)
  • 粘性眼漏(0~3点)
結 果
  • 全頭が最後まで試験を完了。
  • 被験群では特に眼瞼けいれん、充血、眼周囲腫脹、眼漏などの症状が改善。このような改善効果は対照群では認められなかった。
  • 被験群ではすべてのスコアの改善が認められたが、対照群では認められなかった。

犬の免疫介在性ドライアイに対する抗炎症・抗酸化栄養素の効果

  • 60日間の試験終了後、試験食の給与を中止したところ(点眼は継続)、15日後から症状が再発した。再び試験食を給与したところ、症状が軽快した。

結 論
  • 抗酸化・抗炎症効果のある栄養成分は、免疫介在性の犬の乾性角結膜炎の臨床症状に有意な改善をもたらした。

考えられる機序:

  • 相乗的な免疫系の調節効果?
  • T細胞を活性化(炎症遺伝子の転写抑制)?
獣医師のコメント

犬の乾性角結膜炎いわゆる「ドライアイ」は、目の表面の角膜を守る涙膜の異常により、角膜や結膜が乾燥し、炎症が生じる疾患で、疼痛、角膜の損傷、視力の低下、結膜充血、粘性の目やになどの症状を示します。

犬種(キャバリア、イングリッシュ・ブルドッグ、ラサ・アプソ、シーズー、ウェスティ、パグなど)、環境、免疫系の異常、外傷、ジステンパーウイルス、神経学的異常、瞬膜脱出(チェリーアイ)、マイボーム腺の異常、糖尿病、先天性の涙腺低形成、医薬品の使用など様々な要因が原因として挙げられています。

このうち、犬では免疫が関与するケースが非常に多いと考えられており、今回の論文ではこれを対象としています。しかし、効果があるとされている標準治療法である免疫抑制剤タクロリムスと人工涙液のヒアルロン酸では効果が認められず、抗酸化・抗炎症効果のある植物由来の成分の併用により有意な改善が認められました。

タクロリムスは、IL-2のサイトカインの発現を抑制することで複数の機序を介して細胞性免疫と液性免疫の両方を抑制することが知られていますが、面白いのはこの研究で使用された天然成分の多くがこの反対の作用を持つことです。

免疫抑制剤の長期使用は発がん等の副作用が懸念されるため、タクロリムスなどの免疫抑制剤を使用せずに天然の成分だけでどれだけの効果があるのか検討することも重要です。本研究では、食事療法だけの試験群を設定しておらず、また、寛解後もタクロリムスの使用を継続していることから、食事療法だけで寛解が維持できるのかが不明であり、非常に残念なところです。

漢方医学では、乾性角結膜炎は主に肝血虚に起因すると考えられており、杞菊地黄丸や明目地黄丸などの眼に親和性があり、血虚を改善する漢方薬を中心に、症状に合わせて眼瞼のマッサージやマスク、洗浄、ヒアルロン酸点眼、食事療法を併用します。これらの漢方薬にもやはり抗酸化・抗炎症・免疫調整作用のある植物成分が多く含まれています。

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