2015 / 11 / 01

症例紹介 | 手作り食で治った原因不明の嘔吐・軟便

症例プロフィール

Portrait of dog breed long haired dachshund

名前:シルバー
品種:Mダックス(ロングヘア)
年齢:6歳
性別:去勢雄
体質:木タイプ
病歴:特になし

経 過

シルバーくん(ダックスフンド・去勢雄・6歳)はやんちゃで元気な男の子。特に大きな病気をすることもなく健康に育っていました。でも子犬の頃から便が柔らかく、時々下痢をしたり、食べ物を吐いてしまうことが続いており、シルバーくんが3歳のときにオーナーさんからご相談を受けました。

「いつも翌日には治ってしまうので、病院に連れて行くほどでもないし・・・」とのこと。毎年の健康診断でも異常は見つかりませんでした。

食事は成犬用のドライフードを1日2回。動物病院で勧められた乳酸菌製剤を1年ほど続けていましたが、効果は見られませんでした。

そこで、試しにドッグフードを自然の手作り食に変えてもらうことにしました。

オーナーさんは仕事が忙しく、1日2回犬のごはんを作るのが大変ということなので、まずは負担のかからない夜だけ手作り食に切り替え、朝食はドライフードのまま。食事の内容は「タンパク質源(肉・魚・豆類)40%、野菜40%、炭水化物(米)20%」。時間のあるときに作り置きして、冷凍保存しておけるレシピを処方し、これに市販のマルチビタミン、ミネラル、フィッシュオイルのサプリメントを加えました。夜の手作りごはんは胃腸の負担にならないよう、なるべく細かく切り、温めてあげるのがコツ。

さて、初めてのお肉やお魚にシルバーくんは大喜び。野菜も残さず食べてくれました。そして数週間続けていたところ、いつの間にか嘔吐することがなくなり、便の調子もよく形もきれいになったそうです。

オーナーさんも最初は冷凍保存した食材の解凍を忘れたりと大変だったそうですが、慣れた今では5分もかからずに毎回の食事の準備ができるようになったそうです。

そして3年後。今度は体重が増えてきたとのご相談を受けたので、朝晩2回とも手作り食にし、炭水化物量を10%まで減らして、でんぷん質の多い野菜(かぼちゃ、芋類)を控えてもらったところ、体重も少しずつ減り、半年で標準体重に戻ったそうです。現在は、1日2食、同量のタンパク質源と野菜に、GI値の低い炭水化物をごく少量加えるメニューで健康を維持しています。

獣医師のコメント

食べることが大好きだというシルバーくん。東洋医学でいう典型的な脾胃虚弱の状態になっていたようです。消化機能を司る脾胃の機能が落ちると、消化されなかった食物が「痰」として体内に滞り、嘔吐や下痢の形で排出されます。肥満も、この「痰」が体の中に溜まった状態と考えられています。

もともと消化機能が弱く、食の細い子に多い症状ですが、シルバーくんの場合は、食欲が旺盛だったことを考えると、合わない食事によって二次的に消化機能が弱っていた状態だったと思われます。シルバーくんのように多くの場合は食事療法だけで治りますが、重症な場合には漢方薬の併用が勧められます。

カロリー密度と糖質量が高く、加熱加工による副産物や防腐剤などが含まれるペットフードは体中に炎症を起こします。

栄養科学的に説明すると、ペットフードによって消化管粘膜が慢性の炎症状態となり、嘔吐や下痢の原因になっていたと考えられます。 自然食に切り替えることで炎症が軽減し、また、新鮮な栄養素が加わったことから、本来の健康な胃腸機能が回復したのでしょう。また、ペットフードは手作り食と比べてカロリーが高いため、同量~倍量の自然食と置き換えるだけでお腹を空かせることなく、カロリー制限を行うことが可能になります。体重管理中でも、必要なタンパク質、ビタミン、ミネラルはしっかり与えて、筋肉量を減らさないことも重要です。

鑑別が必要な疾患

  • 膵炎、EPI
  • アジソン病などの内分泌系の異常
  • 食物アレルギー
  • 炎症性腸疾患
  • 腸リンパ管拡張症など