獣医師による手作り食・自然療法ガイド

漢方薬やハーブを使用する前の注意事項

愛犬や愛猫にハーブ、漢方薬、サプリメントを自己判断で与えるときの注意点をまとめました。

犬と猫で報告されているハーブや漢方薬、サプリメントの使用事故・副作用の多くは、人用の製品の誤飲や不純物の混入、過剰投与、添加物へのアレルギー反応が原因です。まれに生薬自体に反応を示すことがあります。次の注意を守って与えるようにしましょう。

用量を守れば、ほとんどの漢方やハーブはとても安全です。

ご自宅で安全に漢方薬やハーブを使うには

品質に注意

まずは、希望するハーブや漢方薬、サプリメントを扱っているか、かかりつけの動物病院に問い合わせてみましょう。かかりつけの先生なら、愛犬・愛猫の健康状態を把握しているので安心ですし、医療機関でしか取り扱えない品質のよい製品を購入することができます。扱っていない場合は、GMP基準に従い品質管理をきちんと行なっているメーカーから購入するのがおすすめです。

使用量と使用期間を守る

投与量投与間隔投与期間を守りましょう。最初に与える時は、推奨されている最小量から開始します。犬猫での安全な投与量が不明な場合は調べてから与えるか、使用を控えましょう。

事故を防ぐ

誤飲事故を防ぐため、犬猫が届かない安全な場所に保管しましょう。

猫ちゃん

猫は解毒排泄の仕組みが人や犬と大きく異なっています。人用・犬用のものを与えるときは、猫に与えても大丈夫か必ず確認しましょう。特に精油には注意が必要です。

健康状態

次の場合は、使用の前にかかりつけの獣医師に相談しましょう。

  • 現在、病気治療中の場合。特に抗けいれん薬、心血管薬、利尿薬、ホルモン薬、神経作用薬を服用中の場合は、事前に許可をもらいましょう。
  • 妊娠・授乳中
注意
進行した肝臓病・腎臓病では、解毒排泄機能が低下しています。これらの疾患の治療に推奨されているハーブや漢方薬、サプリメントは投与量を守れば安全ですが、それ以外のものはなるべく種類を限り、最小量で与えるようにしましょう。
手術の前に服用を中止するハーブ

アレルギーがある場合

有効成分だけではなく、添加物についても必ず確認を行いましょう。ペット用のサプリメントには牛肉、豚肉、酵母、乳製品などが味付けによく使われており、人用のハーブやサプリメントには米粉、コーンスターチ、ポテトスターチなどが賦形剤としてよく使われています。

そのほか

漢方薬やハーブ、サプリメントに限らず、空腹時に薬を与えると吐くことがあります。特別な指示がない限り、食事と一緒に与えるようにしましょう。食欲がないときは、好きな味のスープやヨーグルト、缶詰フード、シロップなど、液状のものに混ぜてシリンジやスポイトで少しずつ与えましょう。

用量・用法・上手な飲ませかた
  • 小麦
  • 粳米 (米)
  • 阿膠 (ゼラチン)
  • 山薬 (やまいも)
  • ごま
  • 牡蠣など
  • 乳糖:成犬・成猫は乳糖をうまく分解できないことがあるため、軟便や下痢、腹痛を起こすことがあります。
  • ステアリン酸マグネシウム:顆粒や粉の流動性をよくし、錠剤を作りやすくするために加えられます。ステアリン酸の合成過程で不純物が含まれることがあり、マグネシウムは下剤として働くため、量が多くなるとお腹がゆるくなることがあります。
  • 白糖・はちみつ・ショ糖:糖尿病治療中は注意。
  • キシリトール:犬猫では禁忌。人用の製品に甘味料として使用されていることがあります。
  • パラベン:エストロゲン作用がある防腐剤。人用のサプリメントに使用されていることがあります。
  • 米粉・小麦粉・コーンスターチ・豆粉・ホエイ:ナチュラル系のサプリメントやハーブのカサ増しに使われていることがよくあります。
  • アルコール:ハーブの有効成分を抽出するのに必要な成分です。チンキ剤に含まれるアルコールの量は体内で合成されるアルコールの量より少ないため、多くの犬猫では問題を起こすことはありません。ただし、まれにごく少量のアルコールに反応する犬猫がいるので注意しましょう。初めて使うときは数滴から開始します。フタを開けて軽く湯煎にかけたり、温かい食事に滴下するとアルコール分を飛ばすことができます。
  • ゼラチン:ソフトゲルカプセルに使用されており、牛・豚・魚由来のものが多くなっています。
  • レバー・酵母・チキンフレーバー:犬猫用の製品の味付けに使われていることがあります。
  • 大豆油・コーンオイル・ゴマ油など:オイル系のサプリメントに使われていることがあります。

犬猫で多い副作用の症状は、下痢、嘔吐などの消化器症状です。まれに発疹、かゆみなどのアレルギー症状を起こすことが考えられます。

  • 流涎(よだれ):口に入れてすぐの場合は苦味成分のせいかもしれません。苦味の強いハーブはそのまま与えず、ごはんやおやつと混ぜて与えましょう。投与してしばらく経ってから認められた場合は、吐き気または神経症状の可能性があります。投与を中止しましょう。
  • 消化器症状(嘔吐、軟便、下痢など):他に理由が見当たらない場合は、投与を中止しましょう。過剰投与していないか用量をもう一度確認してください。
  • じんましん、かゆみ:過敏症またはアレルギー反応を起こしている可能性があります。投与を中止しましょう。顔が腫れたり、ぐったりしている場合はすぐに病院に連れて行きましょう。
  • 神経症状(流涎、けいれん、尿失禁など)、呼吸困難、急性腎不全など:大量投与したり、有毒物を与えない限り起こることはまれです。
  • 病院に電話して誤飲した製品の名前と量を伝え、すぐに病院に連れていく必要があるか確認しましょう。
  • 誤飲したものによっては、症状が現れないうちに嘔吐させるか、胃洗浄を行う必要があります。「様子見」はやめましょう。
  • すでに症状が現れている場合は、すぐに病院に連れて行きましょう。どのようなものを誤飲したかによって解毒方法が異なるため、製品のパッケージを持っていくと役立ちます。
  • 人用のハーブを出しっぱなしにしていたら犬が食べてしまった(パッケージごと)。
  • 外用の製品や精油を間違えて内服に使ってしまった。
  • グラム(g)・ミリグラム(mg)・マイクログラム(µg)を間違えて投与。それぞれ1000倍の違いがあるので気をつけましょう。
  • 「体重あたり」の量と「一頭あたり」の量を間違えて投与。
  • 乾燥ハーブ、粉末、エキス、精油を混同。同じ植物由来でも、それぞれ成分や含量、使用量が異なります。
  • 2〜3回与えただけで効果がないと判断してしまう。
  • 副作用が怖いのでたまにしか与えない。
  • 面倒なので1週間分まとめて与えてしまう。

ハーブや食物が治療薬の作用や効果、体内濃度におよぼす影響のことです。

ハーブや生薬、サプリメント、食物には治療薬の効果を強めたり弱めたりするものがあります。多くは、肝臓における薬物の解毒代謝を促進または抑制することで、薬物が体内に残りやすくなったり、体内から早く排泄されることで起こります。

このような相互作用は非常に多く、どんな物質であっても高用量で投与すれば何らかの作用を及ぼすため、すべてのものを把握して予測することは困難です。特に気をつけるべきものについては、本サイトでハーブや生薬を紹介する際に注意事項として記載してあります。

怖がらないで
怖がらないで

用量を守れば心配する必要はほとんどありません。私たちのサイトではハーブや漢方薬を紹介するときには必ず注意点も一緒に記載するようにしています。そちらも参考にしてくださいね。

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