獣医師による手作り食・自然療法ガイド

捨てないで活用!トウモロコシのヒゲ

もうすぐやってくるトウモロコシの季節。今年は皮のついたものを探して「ヒゲ」の部分を犬猫の健康管理に活用しましょう。

トウモロコシを皮ごと買うと付いてくるふさふさの「ひげ」。光沢があり、絹糸に似ていることから英語では「コーンシルク」と呼ばれています。

この部分、実は抗炎症抗酸化などの薬効がある部位。昔から漢方薬として病気の予防や治療に使用されており、現在では、数種類の有効成分が見つかっています。もちろん犬猫でも肥満予防や糖尿病など、病院と家庭の両方で幅広く活用することができます。

主な効能

  • 炎症を抑制
  • 血糖値を下げる
  • 水分の循環を促進(利尿作用)
  • 体内に溜まった熱を和らげる
  • 胆汁の排泄を促進
  • 抗腫瘍

家庭での活用方法

家庭での普段の健康管理には、特に次の場合におすすめです。

  • 太りやすい
  • 炭水化物原料の多いペットフードを食べている
  • 雨の日に元気がなくなったり、症状が重くなる

トウモロコシのヒゲは東洋医学でいう「湿邪(しつじゃ)」を取り除くのに効果的です。湿邪は、現代獣医学では血液検査などに現れる前の前炎症状態と考えられ、体に溜まった湿邪は浮腫(水分貯留)や皮下脂肪、よだれ、目やに、分泌物の出る皮膚炎や外耳炎として現れます。湿邪が長期化すると、体内のあちこちで炎症を起こすようになるため、普段の生活での予防と早期対策が大切です。

参考 梅雨の薬膳ごはんこの時期に気をつけたい湿邪とは?

犬猫の場合、湿邪の最大の原因は炭水化物食品(小麦、米などでんぷん質の多い穀類)ですが、梅雨の季節など、湿気の多い時期には胃腸への負担が大きくなりやすく、消化機能の低下から体内に湿邪がたまりやすくなります。

使用方法はとても簡単。よく洗ってからザルやペーパータオルにのせて2〜3日乾燥させ、ハサミで細かく切って保存。小さじ1(猫・小型犬)から大さじ1〜2(中型〜大型犬)を1日1〜2回食事に混ぜて与えます。または、大さじ1に対し熱湯1〜2カップを注いで「ひげ茶」にし、小さじ1(猫・小型犬)から大さじ1〜2(中型〜大型犬)を1日1〜2回食事や飲み水に混ぜて与えます。

人の場合は乾燥したものをフライパンで乾煎り(ロースト)してから、ひげ茶にすることが多いようです。こうすれば、私たちも犬猫と一緒に楽しむことができますね。

疾患治療への応用

疾患の治療には、エキスや乾燥濃縮ハーブを使用します。他の漢方薬やハーブと併用することがほとんど。

特に肝臓胆嚢腎臓の炎症を抑える効果が高く、血糖値を下げる効果があるため、次のような疾患によく使用します。

  • 猫の脂肪肝
  • 非感染性肝炎・胆嚢炎(黄疸あり・なし)
  • 肝硬変(黄疸あり・なし)
  • 非感染性腎炎
  • 糖尿病

体重1 kgあたり50〜600 mgを1日2〜3回に分けて与えます。漢方処方と混ぜる場合は、漢方処方5〜6に対し、コーンシルク1の割合で混ぜます。

非常にマイルドなハーブなので、大量に与えても問題になることはほとんどありませんが、ビタミンKが含まれているため、ワルファリン治療中の場合は、獣医師に相談してから使用しましょう。